英GSK、米がん治療薬ベンチャー買収 5800億円で
【ロンドン=篠崎健太】英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)は3日、米がん治療薬ベンチャーのテサロを総額51億ドル(約5800億円、負債込み)で買収すると発表した。テサロは2010年創業で、卵巣がん治療薬「ゼジュラ」を主力とする。他の部位のがん治療にも効果が期待されており、買収でがん治療分野を強化する。
米ナスダック上場のテサロ株を1株あたり75ドルで買い取ると表明した。前週末11月30日の終値は46.38ドルで、過去30日間の平均株価に110%上乗せした価格を示した。テサロの株主や規制当局の承認を前提に、2019年1~3月期中の買収完了をめざす。
ゼジュラは「PARP阻害薬」と呼ばれるがん治療薬だ。DNAの損傷を修復する酵素PARPの働きを阻害し、がん細胞を破壊する。米国や欧州連合(EU)で承認済みで、これまで治療が難しかった再発卵巣がんの患者に使われている。
GSKは製薬事業の再構築を進めている。4~6月期には欧州製薬大手ノバルティス(スイス)から一般用医薬品(大衆薬)の合弁事業を130億ドル(約1兆4800億円)で買収した。エマ・ウォルムズリー最高経営責任者(CEO)はテサロ買収について「がん治療薬のパイプライン構築加速を通じて製薬事業の強化につながる」とのコメントを出した。
PARP阻害薬は肺がんや乳がん、前立腺がんなどに対しても治療効果が期待されている。英製薬大手アストラゼネカも「リムパーザ」という同分野の治療薬を手掛けており、有望市場として競争が激しくなっている。
3日のロンドン証券取引所でGSK株は一時前週末比で8%超値下がりした。テサロは最終赤字が続いており、GSKは買収後2年間は1株あたり純利益の押し下げに働くとみている。買収価格は割高との見方から売りが優勢になった。