2018年12月13日(木)

マクロン急進改革離反 反政府デモ止まず
フランスに押し寄せるポピュリズムの猛威

ヨーロッパ
2018/12/3 16:48
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【パリ=白石透冴】欧州で勢いを増すポピュリズム(大衆迎合主義)の波がフランスにも押し寄せてきた。燃料税引き上げに抗議する反政府デモが止まらず、マクロン政権の構造改革路線が窮地に追い込まれている。フランスとともに欧州連合(EU)をけん引してきたドイツでも、メルケル首相が与党党首を退く予定だ。EUの結束が一段と難しくなる可能性が高い。

フランスの燃料税に反対するデモで130人超が負傷した(パリ)=ロイター

フランスの燃料税に反対するデモで130人超が負傷した(パリ)=ロイター

マクロン氏は2日、20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれたアルゼンチンから帰国するとすぐにパリ中心部の凱旋門を訪れた。1日にデモ参加者と治安部隊が激しく衝突した現場で、観光スポットでもある凱旋門は政権を非難する多数の落書きで汚れていた。

パリでは車両への放火や銀行、商店の破壊、略奪も続発。ルーヴル美術館に近いチュイルリー公園周辺や、セーヌ川に近いトロカデロ広場周辺なども混乱し、地下鉄駅の多くが閉鎖された。

同様なデモは各地で起き、仏内務省によると1日の参加者は全国で約13万6千人。現地のメディアによると、内務省は2日、全国で682人を拘束し、負傷者が263人に上ったと発表した。仏政府は「過激派」がデモに乗じて暴力行為を繰り広げたと非難した。

デモが起きた直接のきっかけは政府が環境政策の一環で決めた19年1月に予定しているガソリンと軽油への増税だ。11月17日、初めて大きなデモが実行されて以降、1日まで土曜日ごとにデモが実施されている。

根底にあるのはマクロン政権が進める構造改革路線への反発だ。同路線は企業活動の規制緩和と行財政改革による「小さな政府」を志向する。解雇する際に企業が払う罰金に上限を設けるなど、労働者を解雇しやすくして労働市場の流動性を高めたり、法人税の減税や社会保障費の国民負担の増額などを進めた。

構造改革は既得権益が多い公的部門を中心に痛みを強いる一方で、社会全体が恩恵を感じるまでには時間がかかる。特にフランスは伝統的に「大きな政府」が前提の社会だった。これに大統領府による高額食器購入やマクロン政権に期待した若年層での高止まりした失業率などが加わり、マクロン政権への失望が一気に加速した。

社会的な背景もある。フランス社会は一般にデモを通じた抗議の表明に寛容だ。デモ参加の経験が就学や就職で不利にならないとされており、多くの若者らが顔をさらして活動に加わりやすい。「大きな政府」に慣れた同国では公的部門を中心にストやデモは日常茶飯事だった。

反政府世論で勢いづくのはフランスでもポピュリズム勢力だ。仏議会の有力な勢力で極右政党国民連合(元国民戦線)党首のマリーヌ・ルペン氏は「選挙以外にこの政治危機を乗り越えることはできない」と述べ、国民議会(下院)の解散・総選挙を主張する。

グローバリゼーションに背を向けるトランプ米政権の自国第一主義に世界全体がなびく中、マクロン政権はメルケル独政権とEUの結束をけん引してきた。だが、中東からの移民や難民の大量流入を機に域内共通のルールや政策に異論を示す欧州懐疑派が台頭。ドイツではメルケル政権が選挙で大敗して党首退任に追い込まれ、今回のデモでフランスも例外ではなくなったといえる。

そのEUは来年3月に英離脱を控える。だが英議会が離脱案を承認できなければ英国やEUの経済や政治が大混乱に陥る可能性がある。EUの結束が試されているときだけに、仏独の政権弱体化は大きな痛手となる。

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