2018年12月15日(土)

米中、内憂抱え一時休戦 90日協議の合意見えず
「中国製造2025」は触れず

トランプ政権
貿易摩擦
経済
中国・台湾
北米
2018/12/2 23:17
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【ブエノスアイレス=河浪武史】米中首脳は1日、追加関税の発動を90日猶予する薄氷の合意にこぎつけた。双方とも貿易戦争の激化による国内景気の悪化を避けるために一時休戦で折り合った格好だが、知的財産の保護などを巡って両国は「短期決戦」に突入する。中国の国家資本主義の根幹ともいえる「中国製造2025」計画の扱いは玉虫色で、両国の覇権争いが和解に向かう期待はかけにくい。

「中国は長年、米国を出し抜いてきた。これ以上は許さない」。トランプ米大統領が中国に制裁関税を発動したのは今年7月。5カ月近く両国はにらみ合い、トランプ氏と習近平(シー・ジンピン)国家主席とのトップ会談に打開がかかっていた。土壇場の合意は先行き不安が膨らむ世界経済にとって、ひとまず安心材料になりそうだ。

だが米国が追加関税猶予の条件に設定した懸案の解消は容易ではない。90日以内に中国に解決を求めるのは(1)技術移転の強要(2)知的財産権の保護(3)サイバー攻撃――など5分野だ。

なかでも技術移転の強要は、米通商代表部(USTR)が「不公正な政策は制裁発動後も変わっていない」と指弾してきた。中国が規制緩和した電気自動車(EV)など一部産業も「なお米企業に中国勢との合弁を促す仕組み」と喝破し、先端技術の流出を警戒する。

サイバー攻撃を巡っても米国は「中国人民解放軍の情報部隊が米企業のネットワークに侵入して秘密情報を盗んでいる」などと中国全体を批判してきた。知財保護の抜け穴を90日で防ぐのは「極めて困難」(USTR元次席代表代行のカトラー氏)との指摘が早くもある。

米国は対中貿易赤字を年3800億ドル抱えており、トランプ氏は「長年、中国に出し抜かれてきた」と目の敵にする。中国は農産物やエネルギーなど米国製品を大量購入すると約束し、貿易不均衡の是正に一歩踏み出す。

焦点は米国が数値目標を持ち出すかどうかだ。トランプ政権は5月の米中閣僚会議で、中国に2年で貿易赤字を2千億ドルも減らすよう要求した。未達に終われば再び制裁関税を課されかねない数値目標を、中国側はかたくなに拒んできた。

「米中の覇権争いは20年続く」。中国アリババ集団のジャック・マー(馬雲)会長は貿易戦争を厳しく見通してきた。

背後にあるのは米中のハイテク摩擦だ。米国は急成長する中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)の製品を「スパイ活動に使われる」と市場から締め出しにかかる。ZTEには半導体の禁輸措置で迫り、経営破綻の瀬戸際まで追い込んだ。

中国はハイテク産業に巨額補助金を投じる「中国製造2025」計画を掲げる。人工知能(AI)や自動運転など先端技術は軍事転用も可能で、米国の対中強硬派であるライトハイザーUSTR代表や、ナバロ大統領補佐官は中国の国家資本主義の根幹である同計画の打破が、貿易戦争の最大目的だったはずだ。

ただ、1日発表した声明には、補助金撤廃など「中国製造2025」の見直しは盛り込まれていない。習政権は同計画の撤廃をかたくなに拒んでおり、米国も中国もハイテク摩擦の最大案件をひとまず棚上げした格好だ。同計画の玉虫色の扱いは、90日の交渉の最大の火種となる。

米国側の声明は貿易戦争の終結シナリオにも全く触れていない。90日で両国が折り合ったとしても2千億ドル分の製品への関税(10%)を撤回するのか、25%に引き上げないものの10%のまま維持するのか言及がない。中国側は、米国が25%の関税を課す500億ドル分の制裁措置を「取り消す方向で議論する」と主張するが、米側は完全に沈黙。90日後の制裁関税の行方を「フリーハンド」にしたままだ。

米メディアは米中の今後の協議が90日以内と設定されたのは、例年3月に開かれる中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が念頭にあるとの見方を伝えている。仮に協議が決裂して米国が追加関税の発動に踏み切れば、習政権には政治的に大きな打撃となる。

習政権は首脳会談が迫った11月、貿易・投資を巡って米国に142の改善項目を示して懐柔を図った。トランプ氏は「重要な4、5項目が残っており受け入れられない」と当初は圧力を弱めなかったが、最後は追加制裁の短期猶予を了承した。

トランプ氏と習氏には、貿易戦争が長引けばともに景気が底割れしかねないとの不安がある。過大債務の懸念がある中国は、株価下落で金融不安がくすぶる。米国は「トランプ減税」の効果が薄れる19年後半以降、景気が急減速するともされる。貿易戦争の早期終結に失敗すれば、米中両国の経済は共倒れになる。

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