2019年6月19日(水)

メキシコ新大統領が就任、市場・経済界と対立深く

2018/12/2 9:20
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【メキシコシティ=丸山修一】メキシコのロペスオブラドール新大統領が1日就任した。汚職や治安悪化で既存政党離れが続く中、変革を求める国民の期待は高い。しかし法的根拠のない「国民への意見調査」で建設中の新空港工事の中止を表明するなど混乱を招く政策や政治手法で市場や経済界との対立は深刻。経済見通しにも暗雲が垂れ込めている。

就任演説するメキシコのロペスオブラドール新大統領(1日、メキシコシティ)=メキシコ政府提供

「今から急進的かつ抜本的な変革を実行する。汚職を撲滅してメキシコを再生する」。首都メキシコシティで1日午前に始まった大統領就任式。就任後初となる演説でロペスオブラドール氏はこう切り出した。既存政党への批判を集め7月の大統領選では過去最多得票数で圧勝。経済紙フィナンシエロの11月26日付の世論調査で支持率は66%に達する。

ただ国民の大きな期待とは裏腹に市場や経済界は「ロペスオブラドールショック」に見舞われている。選挙期間中から主張していた首都郊外での新空港建設中止に関して当選直後にはいったんは経済界と協議する約束をしたにもかかわらず突然、何ら法的根拠のない国民への意見調査を実施。中止意見が多数となると「国民の意見」として即座に建設中止を発表した。

中止発表に市場は大混乱した。通貨ペソは1日で3%、代表的株価指数IPCも4%下がった。下落原因は建設中止で「国内総生産(GDP)0.7%分の費用がかかる」(新政権)という直接影響だけでなく、新政権が今後も「国民への意見調査」という法的根拠のない手法で、契約済みの案件ですら簡単に覆す可能性が出てきたという不安の広がりだ。

不安は投資の減少に現れている。メキシコきってのリゾート地、東部ユカタン半島のカンクン。地元メディアによると米アップルレジャーグループは空港建設中止を受け投資環境が不安定になったとして3億ドル規模の開発投資計画を中止した。経済省によるとロペスオブラドール氏の当選直後の7~9月期の外国からの直接投資額は前年同期比で3割近くも減った。

当然、経済成長見通しも悪化している。ロペスオブラドール氏は「6年間の任期中、毎年4%の成長を約束する」と意気込むが、メキシコ銀行(中央銀行)が集計する民間金融機関の成長見通しの19年の平均は6月時点で2.24%。10月には2.15%まで下がった。ディアスデレオン総裁も11月28日の会見で「新政権の経済政策で不確実性が非常に高まっている」と指摘した。

財政規律維持への懸念もでている。公約だったユカタン半島の観光鉄道や大型石油精製施設などの大型インフラ投資に加え、年金倍増など社会政策などばらまきとも見える政策が目白押し。ロペスオブラドールは「公約は全て予算に盛り込む」と約束。「歳出は歳入の範囲内に抑える」と主張するがその確度はまだつかめない。

ウルスア新財務公債相は「19年度の基礎的財政収支はGDP比で1%の黒字を確保する」と強調するが、スペイン銀BBVAは23日付リポートで年金などの社会政策だけでも年間支出はGDPの0.85%に匹敵すると分析。「財政規律を守るのは簡単な挑戦ではない」と警告する。格付け各社も経済成長率の落ち込みなども見ながら格付け引き下げの可能性を示唆している。

対米関係でも「爆弾」を抱える。中米からの移民集団だ。11月25日には一部が警備を突破し国境を越えようとした。トランプ氏は国境閉鎖も示唆しており、移民集団への対処次第では経済への影響も出かねない。同日付地元紙ウニベルサルによるとロペスオブラドール氏が主張する中米移民に就労ビザを発行し国内で受け入れる方針に国民の52.8%が反対だ。

最も懸念されるのは監視役となるべき議会もロペスオブラドール派が多数を占めていることかもしれない。所属党は予算案に権限を持つ連邦下院で単独過半数、条約批准に権限を持つ上院も連携する他党と合わせて過半を確保しており、圧倒的な権力を握る状態だ。強力なリーダーシップは果たして国民の期待に応えられるだろうか。

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