2019年5月21日(火)

米中、首脳会談前に神経戦 G20は亀裂露呈

2018/12/1 13:20
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G20首脳会合で記念写真に納まる安倍首相(前列左から7人目)、トランプ米大統領(同6人目)、習近平中国国家主席(同9人目)ら(30日、ブエノスアイレス)=共同

G20首脳会合で記念写真に納まる安倍首相(前列左から7人目)、トランプ米大統領(同6人目)、習近平中国国家主席(同9人目)ら(30日、ブエノスアイレス)=共同

【ブエノスアイレス=河浪武史】11月30日開幕した20カ国・地域(G20)首脳会議では、泥沼となった貿易戦争の中で緊迫した論戦が繰り広げられた。米中は首脳会談を前に神経戦を続け、米国に「ドナルド、関税の取り下げが必要だ」(カナダのトルドー首相)と直訴する首脳も現れた。世界景気に減速感がにじむ中、米国発の「自国第一主義」は各国に広がり始め、対立の構図は一段と複雑だ。

「各国と幅広く協議すべきだ。ワンマンはいけない」。ブエノスアイレスで2日間の日程で始まったG20首脳会議。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は単独主義を批判してみせた。名指しこそ避けたが、矛先にあるのは翌日に首脳会談で相対するトランプ米大統領だ。

トランプ氏もG20開幕前、アルゼンチンのマクリ大統領と会談した。ホワイトハウスは「両首脳は中国の略奪的な経済行為について話し合った」とあえて対中批判を盛り込んだ声明を発表。両国は首脳会談を前に、ぎりぎりの圧力を加え合う。

トランプ氏は「中国は取引したがっている。何が起きるかみてみよう」と期待感も持たせる。日本の安倍晋三首相も米中に割って入り、11月30日の習氏との首脳会談では「産業補助金や技術移転の強要などで具体的な措置が重要だ」と、米国側に立って背中を押した。

米中の首脳会談が決裂すれば、貿易戦争はますます出口が見えなくなる。習氏はG20会議で「知的財産の保護などを強化する」と柔軟姿勢もみせたが、首脳外交に必要な実務レベルでの協議は進まないまま、1日の会談当日を迎える。

貿易戦争の渦中にあるのは米中だけではない。

「ドナルド、鉄鋼の関税取り下げに尽力する必要がある」。北米自由貿易協定(NAFTA)を改定した「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の署名式。カナダのトルドー首相は記者団の前で突然、トランプ氏に関税撤廃を要求した。

カナダは米国の強い圧力でNAFTA改定に応じたが、鉄鋼などには高い関税を課されたまま。トルドー氏は来年に総選挙を控えるが、カナダでは米国製品をボイコットする「カナダ第一主義」が持ち上がる。他のG20参加国でも自国主義を訴えてブラジルやメキシコでは政権交代が起き、欧州でも英国やイタリアなど多国間協調に背を向ける動きが相次ぐ。

G20会議は1日に閉幕するが、トランプ政権に各国が反発する構図は変わらない。首脳宣言のとりまとめは難航し、G20の交渉筋は「貿易、気候変動、多国間主義を巡って意見調整ができていない」と明かす。

「多国間主義」との文言を入れれば、世界貿易機関(WTO)ルールを軽視するトランプ政権への批判と映る。米国はそのリスクを嫌って声明から「多国間主義」との文言を落とすよう求める。

気候変動問題も国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱を決めた米国と19カ国・地域の対立が続く。急先鋒(せんぽう)はマクロン仏大統領。同氏は支持率が2割台まで急落し、G20の舞台で失地回復を狙う。米国の排除もいとわず「気候変動を巡るG20合意は、米国をのぞく19カ国・地域だけとなるかもしれない」(交渉筋)。

G20会議の冒頭、トランプ氏はロシアのプーチン大統領をあえて無視するような態度をとった。ウクライナ艦船の拿捕(だほ)事件でトランプ氏は米ロ首脳会談を急きょ中止。マクロン仏大統領はサウジアラビアのムハンマド皇太子に、著名記者の殺害事件をG20会場で追及した。貿易戦争で大揺れのG20だが、火柱は各所で上がる。

世界景気は減速の兆しがあり、過大債務の問題や新興国の通貨安などで、再び国際協調が求められる局面だ。G20会議でも国際通貨基金(IMF)が「想定を超えて経済成長が鈍化する懸念がある」と警鐘を鳴らした。

6月の日米欧7カ国(G7)首脳会議では、閉幕前に席を立ったトランプ氏が「首脳宣言を承認しない」と一方的にツイッターで通告する異常事態となった。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)は、発足以来初めて首脳宣言の採択に失敗した。G20までも協調の欠如を露呈すれば、下を向き始めた世界経済の重いリスクとなる。

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