似顔絵捜査 鉛筆100色、記憶写し取る(もっと関西)
ここに技あり 大阪府警

2018/11/30 17:30 (2018/12/3 11:30更新)
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犯人検挙に向け、防犯カメラやDNA鑑定が威力を発揮するようになった捜査現場。だが、こうした捜査で確認できる証拠が現場に残っているとは限らない。大阪府警は目撃者の証言を基に描く「似顔絵捜査」で全国に先駆けて手引書をつくり、技術を磨いてきた。鉛筆と用紙による「アナログ」捜査が今でも欠かせない手段となっている。

犯人の似顔絵を描く練習をする技能員

犯人の似顔絵を描く練習をする技能員

似顔絵を描くのは、講習会に参加し、画力などの実技試験に合格した「技能員」と呼ばれる警察職員。府警は約240人を抱える。技能員は専従ではなく、刑事や交通などの業務をこなしながら要請があれば似顔絵捜査にあたる。約18年で延べ600枚以上の似顔絵を描いた府警鑑識課の男性主任(46)は「一人前になるには約10年の経験が必要」と語る。

技能員は目撃者から的確な情報を聞き出し、その情報から犯人の顔を想像して描く画力が求められる。使うのは、濃淡の異なる鉛筆と色鉛筆約100本とA4サイズの用紙。線を1本ずつ加えては消しゴムで消すことを繰り返し、目撃者に絵を見せて確認しながら実物に近づける。根気のいる作業だ。1枚の似顔絵には1~2時間程度かかるという。

重要なのは目撃者との信頼関係を短期間で築くこと。事件に巻き込まれて動揺し、犯人の顔を十分覚えていない目撃者も少なくない。断片的な情報であっても、うまく聞き出すことが必要となる。技術面では「鋭い目」など特徴的な顔の部位を印象づけるように描く。似顔絵を見た市民らの脳裏に焼き付けるのが狙いだ。ただ「目撃者の記憶をゆがめないよう注意が必要」(男性主任)として、似ている有名人を安易に連想させる問いかけは控えているという。

衣服も大事な要素。過去には犯人が犯行時に着ていた衣服が干されていたのを、似顔絵を見た捜査員が気づいて検挙につながった例もある。

府警は1993年に全国で初めて似顔絵捜査マニュアルを作成。目撃者からの聞き取り方法など実践的な内容で、他府県警でも使用されてきた。府警の技能員を全国に派遣し、技術を指導するなど似顔絵捜査を先導してきた。

現場の意識も高い。男性主任の場合、電車で乗客の顔を観察したり、町中ですれ違った人の顔を思い出して似顔絵にしたりして練習を怠らないという。「顔に関する豊富な知識と観察眼が、鉛筆を握る際の自信につながる」

府警では1年間に約550枚の似顔絵が描かれるという。最近は強盗や殺人事件の捜査だけでなく、行方不明者の捜索や変死体の身元確認にも使われており、活用の幅が広がっている。

文 大阪社会部 澤隼

写真 山本博文

 カメラマンひとこと 「絵師」という言葉がふさわしいだろうか。机には濃淡の異なる鉛筆や色鉛筆がずらりと並んでいた。目撃者から犯人の情報を聞き出し、100本近くを使い分け特徴を描くという。まさに職人技だ。「必ず検挙につなげる」。ひとたび鉛筆を握ると気迫が伝わってくる。鋭い芯を紙の上に滑らせる技能員の眼光もまた鋭かった。
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