2019年3月22日(金)

FRB、利上げ転換点に 好景気でも物価上がらず

2018/11/30 12:55
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【ブエノスアイレス=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)の利上げ路線が転換点を迎えている。11月29日に公表した11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、四半期おきの機械的な利上げを一時停止する可能性を示唆した。FRBは物価の停滞を懸念。市場では12月の次回会合での利上げを最後に、FRBが様子見に転じるとの観測まで出てきた。

利上げ一時停止も議論した米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長=ロイター

「『段階的な利上げ』という声明文の文言は、次回以降の会合で見直す必要があるだろう」。29日公表した議事要旨では、緩やかな利上げ路線を投資家らに予告してきたFOMCの定番文句を、近く取り下げると明言した。

FRBは2015年末に利上げを再開し、17年以降はほぼ3カ月おきに利上げを繰り返してきた。FOMCが使ってきた「段階的な利上げ」という文言を撤回することは、この機械的な利上げ路線からの決別を意味する。12月の次回会合での利上げは確実視されるが、19年以降の利上げシナリオは一気に混沌としてきた。

FRBはもともと20年まで利上げを続けて、現在2%強の政策金利を3.5%まで引き上げるとしてきた。ただ、景気を過熱させず冷やしもしない「中立金利」は3.0%にとどまると分析。11月のFOMCでは、数人の参加者から「中立水準を超えて政策金利を引き上げれば、景気を過度に冷やすことになる」と懸念する声が出ていた。

パウエル議長も11月28日の講演で「金利は中立水準をわずかに下回る」と言及し、利上げの打ち止め時期が近いことを示唆している。FRBが3.5%まで利上げする政策シナリオを修正し始めたのは「物価が2%を超えて過熱する兆しがない」(パウエル氏)ためだ。

29日明らかになった10月の物価指数(食品・エネルギーを除くコア)は、前年同月比1.8%の上昇にとどまり、3カ月続けて目標の2%を下回った。失業率が約48年ぶりの水準まで下がったにもかかわらず、物価上昇圧力は鈍いままだ。現時点でFRBが中立水準とみる3.0%を超えてまで、金融引き締めを強める理由は見あたらない。

FOMCには景気の先行き不安もにじんでいる。29日公表した議事要旨では「リスクは上下で均衡している」と主張したものの、明記された材料は貿易戦争や住宅投資の不振、民間債務の増大など下振れリスクばかりだ。FOMCの景気への見方が弱含んでいることを如実に示している。

FRBの利上げ路線の修正は、トランプ大統領の圧力が効いているとの指摘もある。足元の株安に焦りをみせるトランプ氏は「FRBが最大の問題だ」と批判を強める。側近のクドロー国家経済会議委員長らも「インフレなき成長論」を主張。ある中銀幹部は「人事権を持つホワイトハウスの意向を完全に無視するのは難しい」と話す。

19年中に利上げを停止すれば、政策金利の「天井」は3%に満たない可能性もある。戦後の景気悪化局面で、FRBは平均で5.5%も利下げして実体経済や金融市場の底割れを防いできた。

FRBは利上げ減速を議論するとともに、11月15日には「金融政策の枠組みを再考する」との異例の声明も発表している。FRBが直面するのは、政策金利を十分に引き上げられない状態で、将来の金融緩和余地をどう確保するのかという課題だ。目線は早くも「利上げの停止後」に移っている。

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