ゴーン元会長勾留状況 仏の批判に東京地検「問題ない」

2018/11/30 1:21
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逮捕された日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)について東京地検特捜部は30日、10日間の勾留延長を請求する方針だ。12月10日まで勾留が続く可能性が高い。フランスメディアを中心に、勾留期間や取り調べ環境に批判的な論調が目立つ。国際的な関心が高まる背景にはフランスと異なる日本の刑事司法の手続きがある。

「(取り調べ中に)弁護士の立ち会いもできない」(仏紙ルモンド)「ゴーン元会長は特に厳しい日本の勾留制度を経験することになる」(仏経済紙レゼコー)

フランスで日本の刑事司法手続きで関心が高いのは、大きく2つの点がある。第1が勾留期間だ。日本では検察が逮捕した容疑者の拘束期間は48時間。その間に検察側の勾留請求が裁判所から認められれば10日間、さらに10日間の延長が可能となり、勾留期間は最長20日間に上る。内田博文・九州大学名誉教授によると、戦前に5日間だった勾留期間も「自白調書を取るには短すぎる」という理由で戦後、10日間に延びたという。これに対し、フランスでは捜査の初期に容疑者の身体を拘束する「警察勾留」は原則24時間で、日本に比べ当初の勾留期間は短いことが分かる。

2018年6月に報道公開された東京拘置所の単独室

2018年6月に報道公開された東京拘置所の単独室

第2が「密室」ともいえる取り調べ環境だ。弁護士の立ち会いはフランスを含め世界各国では主流だが、日本では認められていない。フランスでは捜査妨害にならないと判断されれば家族とも面会できるが、日本は家族や会社関係者との面会は厳しく制限され、ゴーン元会長も弁護士と領事官しか面会できていない。口裏合わせなどを防ぐのが理由だ。

ルメール経済・財務相は25日、仏BFMの取材に「まだ何も情報をもらっていない。証拠を受け取れることを望んでいる」と語った。こうした刑事司法手続きの違いが、フランスには容疑者の人権軽視と映るようだ。

一方、東京地検の久木元伸次席検事は29日の定例記者会見で、勾留期間への批判に「それぞれの国にそれぞれの歴史や法制度があり、自分の国と異なることを理由に批判するのは妥当ではない」との見解を示した。その上で「(ゴーン元会長らの)裁判所に必要性が認められて勾留状が発付されている。無用に長期間の身柄拘束をする意図はない」と説明した。

フランス刑事法に詳しい神奈川大の白取祐司教授(刑事訴訟法)は「両国の司法手続きは大きく異なり、批判の大半は誤解だ」と指摘。フランスでは重大事件では当初の勾留の直後から「予審判事」が捜査にあたり、裁判が開かれる前の身体拘束は最長で4年8カ月に及ぶとし、「勾留環境も大きな差はなく、弁護士が立ち会えないことを除けば批判は当たらない」と話す。

ただ、日本の長期の身体拘束で自白を得る手法は「人質司法」と呼ばれ、海外でたびたび問題視されてきた。2013年5月の国連拷問禁止委員会では、日本の刑事司法について委員から「中世の名残だ」との批判も出た。内田名誉教授は「戦後の混乱期の応急処置で人権より治安が優先され、検察の権限が強くなったまま現在に至る」と指摘する。

今後、司法手続き上の焦点は保釈のタイミングだ。逮捕容疑の勾留満期は12月10日。別の容疑で再逮捕されれば、年末までさらに最長20日間の勾留が続く。起訴されても容疑を否認し続ければ、弁護側が保釈請求しても検察側が強行に反対。裁判所が保釈を認めないケースが多く、17年に起訴から判決までに保釈された割合は約3割にとどまる。勾留がより長期化している。

有罪率99.9%に及び、「起訴イコール有罪」とみなされる日本の刑事司法。ゴーン元会長の勾留に世界的な関心が集まるなか、国際世論から批判が高まれば、見直しを含めた議論につながる可能性もありそうだ。(山田薫、アムステルダム=白石透冴)

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