ウーマン・オブ・ザ・イヤー、大賞に中村朱美さん
2019全受賞者を発表
女性のキャリアとライフスタイルを支援する女性誌『日経WOMAN』(日経BP社 東京都港区、編集長:藤川明日香)は、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」の大賞者・中村朱美さん、特別賞・小平奈緒さんを含む、今年の受賞者10人を決定いたしました。
「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」大賞に選ばれたminitts代表取締役の中村朱美さん(34歳)は、「1日100食、ランチ営業のみ」の営業形態で、従業員全員が残業なしで帰る働き方を実現するステーキ丼専門店「佰食屋」のオーナー。あえて儲けを追求せず、短時間でも働きがいを持てる営業形態が、育児や介護などの事情を抱えた人でも細く長く働ける「人生100年時代の新たな事業モデル」として注目を浴びています。常識にとらわれない発想でこれからの新しい働き方を体現していることを高く評価し、今年の大賞となりました。
ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019 総括
2018年は、社会的な課題に挑戦し、未来の働き方を創造する女性が活躍した年でした。
売り上げや利益を追求する、従業員を増やすなど、企業規模拡大を目指すのが"経営者の王道"だとすると、今年の大賞受賞者の目指す方向は正反対。「飲食業でも残業ゼロで夕方には帰れる」を実現するために、「ランチのみ100食限定」で利益が出せる、小さなビジネスモデルを構築しました。ほかにも、AIによる業務効率化で「疲れたサラリーマンのいない未来」を実現しようとする起業家、何かに失敗しても再び挑戦できる社会を目指す社会起業家、仕事と育児の両立を投資で支援する金融のプロなど、日本社会が直面する課題を「自分ごと」ととらえてそれぞれのフィールドで解決しようと、強い意志を持って取り組んでいます。
また、家族や仲間などのパートナーと共働でビジネスを進め、既成概念にとらわれない女性が大胆な発想でプランを立て、成功につなげたケースも目立ちました。
【ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019受賞者】
大賞
1日100食限定のステーキ丼専門店で、シングルマザーも
高齢者も働きやすい、「人生100年時代の働き方」を実現!

人材不足で残業が多く、休みが取れない――そんな飲食業界の常識を覆す、新しいビジネスモデルを生みだしたのが中村朱美さんだ。国産牛を使ったステーキ丼専門店「佰食屋」ほか、すき焼き専門店、肉寿司専門店の3店舗を京都市で経営。「行列ができる店」として、テレビなどのメディアで取り上げられることも多い人気店だが、実はどの店も1日100食限定でランチ営業のみ。売り切れたら営業が終了するため、片付けや翌日の仕込みをしてもスタッフは全員、17時45分には店を出られ、残業は一切ないのが特徴。働く時間は家庭の事情などに合わせて1時間単位で選べるようにしており、シングルマザーや、要介護の親を抱えている人も、正社員として活躍している。
そんな柔軟な働き方ができる飲食店をつくったのは、中村さん自身が「夕食は家族皆で食べたい」という強い思いを持っているから。前職は会社員で仕事は充実していたが、出張や残業が多く、結婚・出産後も長く働き続けられるか不安もあった中村さん。結婚を機に料理好きの夫を誘い、夫婦で飲食店をやろうと脱サラする。飲食業界の既存の概念にとらわれず、1日100食を売り切ったら営業を終えるというビジネスを思いつき、実現させた。現在は、2歳と4歳の子供を持つワーキングマザーとして仕事と家庭とを両立する。
また、100食限定で毎日売り切る仕組みは、食品廃棄問題の解決にもつながる。仕入れる食材の量は常に一定。牛肉は必要な分だけを塊で仕入れ、丁寧にさばいて廃棄率を極力抑えるなど、食品廃棄を徹底的にカット。売り上げは4年連続で伸びており、17年度はついに1億2000万円を突破。中村さんは「今後はフランチャイズ化を通じて、こうした働き方を全国に広めていきたい」と考えている。
再出発サポート賞
14歳からホームレス支援活動を始め、19歳でNPO法人を立ち上げ、理事長に。
長年の夢だった自立支援施設が2018年に完成!

14歳で炊き出しのボランティアに参加。以後、13年にわたりホームレス支援活動に携わる。19歳でNPO法人Homedoorを設立。21歳のとき、シェアサイクルビジネス「HUBchari(ハブチャリ)」を始め、ホームレス状態の人の就労支援活動の柱とする。以後、ホームレス状態の人にお弁当を配る夜回り活動「ホムパト」やシェルター設置など、ホームレス支援活動の内容を充実させる。2018年には大阪市北区の5階建てのビルを借り、包括的な自立支援ができる「アンドセンター」を設立。17歳から思い描いていた夢をかなえた。
新・事業承継モデル賞
廃業する今治の老舗タオル会社を事業承継。
知識も顧客もゼロからブランドを立ち上げて黒字に

故郷の愛媛県今治市で、歴史あるタオル会社が後継者不足のために廃業しようとしていると知り、親族でもなく、異業種からの参入で未経験な上に、取引先もゼロという状況ながら、同郷の夫とともに3年前に事業を承継。直後の半年間は受注ゼロという逆境を乗り越えて、自信を持って売れる高品質のタオルを開発。イベントやSNSなどを利用してブランドイメージを演出して徐々に顧客を増やし、黒字化にこぎつけた。新卒採用も始めており、「若者が戻りたい今治」を目指している。
世界の子供を守る賞
カンボジアで「子供が売られる」問題が改善
次はインドでも同様の課題に、2020年を目標として取り組む

カンボジアで16年間にわたり、子供が売春宿に売られる問題の解決に向けて取り組んできたNPO法人かものはしプロジェクト。この組織を大学生のときに仲間と立ち上げた村田さんは、現地で困難な状況に直面しても「子供が売られてはいけない」という信念を貫いた。2018年4月からは、この問題がより深刻なインドに経営資源を集中させて、被害女性の社会復帰支援や、新法成立のために活動する。村田さんらが伝える思いに賛同するサポーター会員は、6995人(18年3月末時点)に。
ブレイクドラマ制作賞
自身の体験から着想したドラマ『おっさんずラブ』が大ヒット!
放送終了後も話題を提供し続ける

今年大ヒットした2018年4~6月期の土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)のプロデューサー。同作は自身の体験から着想した完全オリジナル作品。男性同士の恋愛を王道のラブストーリーとして描き、「人を好きになることの純粋さ」を伝えたことで、多くの視聴者の心をつかんだ。主演の田中圭さんのブレイクや公式グッズのヒット、18年「新語・流行語大賞」ノミネートなど、話題が絶えない。
イノベーティブ起業家賞
AIで「面倒な事務作業」をなくしていく。
連続起業家が見つけた競争力の源はベトナムの優秀なIT人材

2018年に9億円の資金を調達し、注目を集めるAI(人工知能)ベンチャー、シナモン。主力製品はAI技術を活用した文書読み取りシステムで、申込書や請求書などの不定型の文書から、手書き文字を含む必要な情報を自動で読み取る。高い精度のシステムを支えているのは、同社のベトナムのAIラボに所属している約50人の優秀なIT人材。「5年後にはAIエンジニアを500人に増やして、世界最大のAI企業を目指します」。
日本を伝えるメディア賞
ウェブ全盛時代に、あえて英字新聞を発行するジャパンタイムズを買収。
日本と地方の魅力を世界に向けて発信する

企業のネットPRを手がける会社を経営する末松さんは、2017年6月に、ジャパンタイムズを買収。「日本企業の良さ、特に地方の良さを英語でもっと世界に発信していくべき」と考え、「Satoyama推進コンソーシアム」を設立して、地方自治体や地域のサステイナブルな取り組みを英語で紹介している。また、自らの体験をもとに「仕事のために産むことを迷う女性にとっての選択肢を増やせれば」と、日本初の小学生向けボーディングスクール(全寮制学校)の1条校を広島県に開校準備中だ。
子育て支援サポート賞
国内の民間の金融機関初のインパクト投資、「子育て支援ファンド」を組成。
金融のプロとして、育児関連企業を応援

2017年1月、国内の金融機関初のインパクト投資を行う「子育て支援ファンド」を立ち上げた。2人とも小学生以下の子供を育てるワーキングマザー。自分たちも育児と仕事との両立に悩んだ時期があり、子育て関連のサービス向上に金融のプロとして貢献したいと考えた結果、投資を通じて社会的な課題の解決を図りつつ利潤も確保する「インパクト投資」にたどり着いた。業界初の取り組みへの反響は大きく、来春、社外から投資を募る次のファンドをスタートする。
特別賞
「言葉の力」で技術を磨き 3度目の五輪で金メダル獲得
2018年平昌五輪のスピードスケート女子500mで金メダルを獲得した小平さん。大学進学、就職、オランダへの留学と、進むべき道をすべて自分で選択し、31歳、3度目の五輪挑戦で念願の金メダルを獲得した。今季も連勝記録を伸ばしている。毎日の練習で気づいたことを「技術カルテ」に書き残して頭と体で理解することが、強さの秘密の1つだという。
「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」の詳細については、12月7日に発売する『日経WOMAN』2019年1月号をご覧ください。
[nikkei WOMAN Online 2018年11月30日付記事を再構成]
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