グーグル社員が抗議声明、中国での検索再参入に反発

2018/11/28 4:25
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米グーグルが検討している中国での検索事業再開が波紋を広げている。27日に一部社員が「政府の監視強化を助けるだけ」などの声明をインターネット上に公開し計画撤回を求めた。巨大市場の中国攻略はグーグルの課題だが、米政界や社内の反発は強い。民間企業とはいえ公益性も無視できない。「社会インフラ」に近づきつつあるネット企業の新たな悩みだ。

グーグルはこれまでも社員の声に基づき戦略を再検討してきた=AP

90人を超える署名が入った声明には、グーグルが「ドラゴンフライ」の名称で開発中の中国向け検索エンジンへの懸念がつづられている。中国政府が国民監視を強めているとして、ユーザーデータを政府に渡すような事業はやめるべきだと指摘。検索結果を政府が検閲することによる情報操作の恐れも指摘した。

声明は人権団体のアムネスティ・インターナショナルと共同で掲載した。「グーグルは企業利益よりも(人道的な)価値に重きを置いてきたが、いまやそれを信じることはできない」と経営陣を強く批判した。

グーグルは2010年に政府検閲への懸念から検索事業から撤退したが、中国がネット市場として魅力を高めるなか、水面下で再参入の道を探ってきた。スンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は10月、「ドラゴンフライ」について「中国は革新的な市場でありネットユーザーも多い」と述べ事業化への意欲を隠さなかった。

今回の声明が重い意味を持つのは、グーグルはこれまでも社員の声に基づき戦略を再検討してきた経緯があるからだ。

今春には米国防総省が同社の人工知能(AI)を無人飛行機向けに採用することに社員が「戦争に加担できない」と猛反発。社内で署名運動や辞任騒ぎが起き、計画の撤回を決めた。10月には社内のセクハラを批判する大規模集会が世界中の事業所で開かれ、会社は厳しいセクハラ対応ルールを新たに策定した。

悩ましいのはそれでもいまの中国は10年当時と異なりグーグルにとって無視できない存在になっている点だ。

ある社員は「今入らないと中国企業に市場を完全に押さえられてしまう」と話す。検索では中国バイドゥが支配力を持ち、クラウドもアリババが強い。グーグルのクラウドは「中国で弱いのでアジア全域での事業展開を考えると使いにくい」(日系企業幹部)との声がユーザーから漏れる。

欧州を中心に最近は米国でもプライバシー問題などで逆風が吹くなか、中国を念頭に置いたアジア事業の拡大は長期の成長を考えればグーグルにとっては不可欠だ。別の社員は「グーグルは外から見るよりもトップダウンだ」とピチャイCEOの中国重視戦略に理解を示している。

一方、中国に対しては政治の側からも声があがる。一部メディアが「ドラゴンフライ」の計画を報じた直後、グーグルの担当者はワシントンでの釈明に追われた。保守派で知られる共和党のテッド・クルーズ議員らが「検閲の恐れはないのか」などと質問を浴びせたという。米議会内では安全保障や知財の視点から中国への警戒心がくすぶっている。

実現するにしても「まだ先」(ピチャイCEO)とされる中国への検索再参入だが、今後も議論の的になり続けそうだ。グーグルにとっていいことは米国にとっていいことなのか――。50年代、時代を代表した米ゼネラル・モーターズ(GM)に向けられた言葉がいま、シリコンバレー企業に向けられている。

(ラスベガス=中西豊紀)

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