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受精卵のゲノム編集で女児出産の報道、国際会議で批判

(更新)

【香港=安藤淳、広州=川上尚志】遺伝情報を効率よく改変できるゲノム編集技術の応用法などを話し合うヒトゲノム編集国際会議が27日、香港で始まった。中国の研究者が受精卵をゲノム編集し、双子が生まれたと報道されていることに多くの参加者が戸惑いを見せ、批判の声があがった。

問題になっているのは中国の南方科技大学(広東省深圳市)の賀建奎副教授の研究。エイズウイルス(HIV)に感染した男性の精子を使ってできた受精卵にゲノム編集を施し、ウイルスが細胞に入らないようにした。その後、女性の子宮に入れ双子の女児が生まれたと報道されている。

同会議組織委員長のデービッド・ボルティモア米カリフォルニア工科大教授によると、賀副教授はゲノム編集の研究で専門家の間では知られた存在。ただ双子出生の報道後は「本人と接触しておらずデータも見ていないので真偽はわからない」と述べた。28日の賀副教授の講演予定に変更はないという。

中国の生命倫理問題の専門家である北京協和医学院の邱仁宗氏は「倫理的に受け入れられない。大学の正式な審査委員会の承認も得ておらず規則違反だ」と強く批判した。国内規制の強化や国際指針の作成などが必要だと指摘した。

米ハーバード大のジョージ・デイリー教授は日本経済新聞の取材に「ゲノム編集を臨床応用する歩みは大切だが、受精卵から子が生まれるという事態は想定していなかった」と驚きをみせた。「科学界のコンセンサスに反して一部の人たちがこうした行為に走るのはよくない」として、科学に対する信頼が損なわれることへの懸念を示した。

一方、中国の国家衛生健康委員会は26日、広東省の関連部門に調査確認を実施するように指示。なるべく早く結果を公表するという。

医学や生物学などを専門とする中国の科学者122人は26日、「(動物ではなく)直接的な人体実験であり、狂っているとしか言いようがない」と批判する共同声明を発表した。27日にはエイズの研究や治療に携わる130人以上の中国内外の専門家も共同声明を出し「科学や倫理、道徳を無視した今回の行為に断固反対する」と批判。「ゲノム編集技術の人体や生物への応用について管理方法を速やかに制定すべきだ」と主張した。

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