2018年12月13日(木)

ワンマン経営 尽きぬリスク(The Economist)

ゴーン退場
北米
The Economist
(1/3ページ)
2018/11/28 2:00
保存
共有
印刷
その他

The Economist

カルロス・ゴーン氏ほど激しい転落を経験する最高経営責任者(CEO)はそうはいない。同氏は11月16日時点で、ルノー、日産自動車、三菱自動車の自動車メーカー3社を率いる会長であり、不可能を可能にするナポレオンのような存在との名声を得ていた。だがその数日後、東京地検特捜部に身柄を拘束された。

規制当局に金銭報酬を約50億円過小評価したとして逮捕された日産のカルロス・ゴーン元会長=ロイター

規制当局に金銭報酬を約50億円過小評価したとして逮捕された日産のカルロス・ゴーン元会長=ロイター

規制当局に5年間で金銭報酬を約4500万ドル(約50億円)過少報告していたことを日産が告発したためだ。ゴーン氏にとっては、自分の逮捕により3社の株価が急落したことで、自分の経営者としての価値を再認識できたのは多少の慰めになっただろう。3社の時価総額は、逮捕以降計7%、金額にして50億ドル吹き飛んだ。投資家は、3社の複雑なアライアンス(連合)のかじ取りができる人物は同氏以外にいないと懸念を募らせている。突然失脚した同氏は、どうやら代えのきかない存在らしい。

■S&P500社のトップの平均在任期間は11年

ワンマン経営のリスクは、特定の個人の存在や不在、行動が企業価値に著しく影響を及ぼすときに顕在化する。人工知能(AI)の活用が広がり、経営トップがあまりでしゃばらない今の時代に、ワンマン経営者が企業のリスクになるというのは驚きかもしれないが、そのリスクは今も至るところに存在する。ゴーン氏のケースは、今年表面化したリスクの一例にすぎない。広告世界最大手WPPの株価は、4月に創業者のマーティン・ソレル氏が会社の資産を私的流用した疑惑からCEOを引責辞任して以降、27%下がった。米テスラも、創業者兼CEOのイーロン・マスク氏がツイッター上で投資家に誤解を与える発言をしたとして(編集注、株式非公開化の方針をつぶやき、その後撤回した)、米証券取引委員会(SEC)が同氏を9月28日に提訴すると、株価は14%下落した。

ツイッター上でテスラの株式非公開化の方針をつぶやいたことが、投資家に誤解を与えたとして米SECに提訴された同社のマスクCEO=ロイター

ツイッター上でテスラの株式非公開化の方針をつぶやいたことが、投資家に誤解を与えたとして米SECに提訴された同社のマスクCEO=ロイター

本誌コラム「シュンペーター」が調査したところ、世界の時価総額上位20社のうち、ワンマン経営のリスクを抱える企業はアマゾン、バークシャー・ハザウェイ、JPモルガン・チェースなど8社ある。S&P500の企業500社が米規制当局に毎年提出するリスク開示情報によれば、CEO(あるいは、影響力の大きいその他の経営幹部)の身に何か起きれば、業績に深刻な影響が及ぶとする企業は66%に達する。

経営者がこんなに力を持つはずではなかった。1960~70年代に、企業を牛耳る独裁的なトップは絶滅するはずだった。代わりに台頭したのは、面白みに欠ける小粒の経営者だ。映画「卒業」には、人生で目指すべきは「一言で言えば……(これから有望な)プラスチック(を生産する化学業界)だ」などと助言する即物的な人物が登場する。経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイス氏は67年に「新しい産業国家」を出版し、米産業界は個性の乏しい凡庸な官僚的な経営陣に支配されていると論じた。経営者は、インセンティブ次第で管理できるスタッフにすぎないとみる現代ファイナンス理論も登場した。

  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報