2019年3月21日(木)

退学防ぐ「見守り」、キーボード操作…大学が学生支援

2018/11/27 12:52
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日経クロステック

大学ICT推進協議会(AXIES)は、2018年11月19日から21日までの3日間、大学の最高情報責任者(CIO)や情報教育関連の教員などが参加する年次大会を札幌市で開催した。会期中は、大学におけるeラーニング、ICT(情報通信技術)基盤整備やセキュリティー、研究支援など様々なテーマで研究発表や講演があった。

多くの発表の中でも「今どきの大学」を感じさせたのが、ドロップアウトを防ぐ学生の見守りシステムやキーボードスキルが低い学生への対応、深刻さを増すサイバー攻撃対策などだ。

■ログインすると管理者に通知

麗澤大学が開発している学生見守りシステムは、見守り対象の学生がログインすると、管理者にメールや画面表示で通知する(出所:麗澤大学が発表した論文)

麗澤大学が開発している学生見守りシステムは、見守り対象の学生がログインすると、管理者にメールや画面表示で通知する(出所:麗澤大学が発表した論文)

麗澤大学(千葉県柏市)は「システム利用情報を活用した学生見守りシステム」を発表した。最近は、大学の退学者を減らす取り組みの必要性が高まっているという。システムを発表した麗澤大学 大学事務局情報システム室課長補佐の矢野孝三氏によると、「ドロップアウトする学生はいきなり学校に来なくなるのではなく、学校には来るが授業に出ないといった状況を経て、やがて登校しなくなる」という。

学生の利用履歴から問題のある行動を見つけ出せる可能性がある。プライバシーへの配慮など、実用化には課題もある(出所:麗澤大学が発表した論文)

学生の利用履歴から問題のある行動を見つけ出せる可能性がある。プライバシーへの配慮など、実用化には課題もある(出所:麗澤大学が発表した論文)

学生見守りシステムは、学生が学内ネットワークにログインすると、どこで誰が使っているという情報をリアルタイムで提供する。これを利用し、問題がありそうな学生を見つけたい場合、その学生がログインすると通知が表示されて居場所も分かる。こうして声をかけて相談に乗るなどすれば、ドロップアウト防止に役立てることが可能になる。さらに、パソコンの利用履歴から学生の匿名データを解析し、「ドロップアウトに結び付きそうな行動を取る学生が退学に至るのを未然に防げないか研究している」(矢野氏)。

■スマホ普及で学生のパソコンスキルが低下

若年層の情報機器がパソコンからスマートフォン(スマホ)に移ったことによる情報リテラシー低下を報告する発表も多かった。駒沢女子大学(東京都稲城市)人文学部メディア表現学科教授の篠政行氏は、10年から9年間にわたり新入学生を対象に実施した意識調査の結果を発表した。対象は駒沢女子大学と文化学園大学の学生。

それによると、「パソコンの基本操作が得意と思っている」学生は年々減少傾向にあり、タッチタイピングができるとする学生も減っているという。一方で、スマホでの日本語入力速度はキーボード(初級者)の2倍以上と圧倒的にスマホ優位だ。篠氏は、「スマホやタブレットの普及が、パソコンを使った情報処理に対する意欲の低下につながっているのではないか」と分析した。

福岡女子短期大学(福岡県太宰府市)も、1年生を対象とした5年間のアンケート結果を発表した。18年度の調査では、「インターネットを利用する際に使用する情報機器としてパソコンを使う」と答えた学生はわずか2%と、4年前の5分の1程度まで低下した。同大学を運営する九州学園情報処理室の古市恵美子氏は、「パソコン離れの加速によってコンピュータリテラシーが不足しており、今後の対策が課題」と指摘した。

■大学のセキュリティー対策も喫緊の課題

大学へのサイバー攻撃と情報漏洩事件が相次ぐ中、セキュリティー対策への関心も高かった。横浜国立大学情報基盤センター長の田名部元成教授は、LMS(学習管理システム)での情報配信やeラーニング、冊子教材、解説記事を閲覧できるクラウドサービスを組み合わせた教職員向け情報セキュリティー研修の計画について発表した。

田名部教授によると、大学の情報セキュリティー対策には、「サイバー攻撃の新しい手口について知識を更新する必要がある」「現場の教職員が無理なく学び続けられるような解決策が求められる」「情報セキュリティーの動向に継続的に関心を持ってもらう必要がある」などの課題があるという。

横浜国立大学で計画している情報セキュリティー研修の仕組み(出所:横浜国立大学田名部元成氏の発表スライド)

横浜国立大学で計画している情報セキュリティー研修の仕組み(出所:横浜国立大学田名部元成氏の発表スライド)

研修ではまず、教育機関で最近発生したセキュリティーに関する事件のニュースを、LMSを介して職員に送信する。これによってセキュリティーに対する教職員の関心を高める。さらにeラーニングや冊子教材でセキュリティーについて学習するとともに、記事閲覧サービスで最近の事件や関連情報などについて学ぶという仕組みだ。

企業と同様に、大学も標的型攻撃の対象になっている。弘前大学は、標的型攻撃に備える学内訓練の実施と、18年6月に発生したフィッシングによる個人情報漏洩対策として多要素認証などを導入したことを報告した。東北大学も、15年度から継続して実施している標的型攻撃対応訓練の詳細を発表した。

(日経パソコン 江口悦弘、教育とICT Online編集長 中野淳)

[日経 xTECH 2018年11月26日掲載]

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