携帯端末・通信「完全分離」を 総務省会議が緊急提言
総務省の有識者会議は26日、国際的に割高とされる携帯電話料金の引き下げに向けた緊急提言案をまとめた。長期契約で端末代を割り引くといった手法が通信料の高止まりを招いているとし、通信料と端末代の完全分離を要請する。今後、大手携帯会社が料金プランを改める動きが加速すれば、2019年中にも「分離」が実現する見通しだ。

提言案は(1)シンプルで分かりやすい料金プランの実現(2)販売代理店の業務適正化――の2つの柱を掲げた。パブリックコメント(一般からの意見募集)を経て19年1月に正式に決定する。総務省が19年の通常国会に電気通信事業法の改正案を提出する検討に入る。
携帯電話の料金は現在、端末購入を条件に通信料を割り引いたり、一定期間の通信契約を前提として端末代を割り引いたりする場合が多い。
端末と通信をセットにする販売手法は欧州など海外でも一般的だ。米国では端末と通信が別々なことが多かったが、最近ではセットプランの割り引きもあるという。
日本のセットプランが珍しいわけではないものの、海外に比べて各社の競争が過熱し料金体系が複雑になりすぎている問題がある。利用者は端末や通信にいくら支払っているかが分かりにくい。
発売されたばかりの高額な端末を「実質0円」で販売するなど、「過度な値引きは日本に特有」(26日の会議に出席した有識者)の事態だ。

韓国ではある程度、通信料と端末代を分離する仕組みを導入している。かつて通信とのセットの際に端末の過度な値引きが横行したため、韓国政府は携帯販売の新法を施行。端末に対する補助を一定額以下に抑えることを定めている。
日本の現状のプランは、通信料が高止まりするだけでなく、頻繁に端末を買い替える人に恩恵が偏るとの指摘もある。一部のユーザーが購入する高価な端末代への補助は、ユーザー全員が支払う通信料が原資となっているためだ。
総務省は今回の提言を受け、端末代と通信料をひもづけることを原則として禁止する方針だ。2つを切り離し、通信料への端末補助の上乗せを避けることで、通信の値下げにつなげる方針だ。
「2年縛り」といった長期契約の見直しも求め、期間を拘束しないプランとの料金の差が過大にならないようにする。消費者が自分の使い方にあったプランを選びやすくし、高すぎるとの指摘がある途中解約の違約金も抑える方向だ。

消費者が実際に契約を結ぶことが多い販売代理店にも規制の網をかける。すでに大手携帯会社に過度な端末補助をすることを禁止しているにも関わらず、店頭では「実質0円」で販売するような商慣行が残っている。
総務省はいびつな販売手法を直接、監視できるよう代理店の届け出制を導入。悪質な場合は業務改善命令などの行政処分ができるようにする。
総務省は4月に携帯電話市場の競争促進策をまとめたばかりだが、わずか半年ほどで新たな政策対応を迫られる。通信料の引き下げなどで十分な成果があがっていないためだ。次の一手でどこまで実効性を高められるかが焦点になる。