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「ワラビーズ」再生策は? 初の女性トップに聞く

NZ出身の豪ラグビー協会CEO

ラグビーのオーストラリア代表が苦しんでいる。2015年ワールドカップ(W杯)で準優勝した後、成績はふるわず、18年もテストマッチで4勝9敗と大きく負け越した。人気に陰りもみえる代表「ワラビーズ」ブランドを再生しようと奔走しているのが、オーストラリア・ラグビー協会のレリーン・キャッスル最高経営責任者(CEO)だ。18年1月、ラグビー伝統国で初めての女性トップとして就任。しかも長年のライバルであるニュージーランド(NZ)出身とあって、世界のラグビー界を驚かせた。日本のサンウルブズが参加するスーパーラグビー(SR)の将来を決める議論でもキーパーソンであるキャッスルCEOに、再生策などについて聞いた。

「私にはスキル、国籍は無関係」

「ワラビーズ」再生に奔走するキャッスルCEO

――あなたの人事は、韓国の人が日本サッカー協会の会長になるようなものだ。

「豪州ラグビー協会が探していたのは、スポーツチームの運営経験がある人だ。私は10年間、NZネットボール協会と、(豪州のラグビーリーグの)カンタベリー・バンクスタウン・ブルドッグスにいた。現代では、スポーツ組織のリーダーは何百万ドルものビジネスを運営する商業的な経験と、ベストな選手を育成するスポーツ市場の理解とのコンビネーションが必要だ。私はそのスキルを持っている。それが豪州協会が探していたもので、私の国籍は関係ない」

――どうやって豪州のラグビーユニオンを再生するのか。人気は下がっていると聞いたが……。

「ノー、まだ人気はある。15年のW杯では決勝に行った。200万人が真夜中に起きてワラビーズが戦うのをテレビの生放送で見た。だからまだとても人気があるスポーツだ。それに疑いはない。SRで豪州のチームがいいパフォーマンスをみせれば、それはワラビーズに流れ込んでいく。なぜならSRで成功すれば、ワラビーズにきたときには彼らは勝つことができるから。だから商業的にはとても安定していて、様々な新しい機会を広げている。豪州の国際的スポーツチームはクリケットとワラビーズの2つしかないから」

ワラビーズは18年のテストマッチで4勝9敗と大きく負け越した=AP

――でもサッカーの人気が豪州でも高まっているのでは?

「確かに成長している。地域レベルでサッカーをする人の数はとても多い。でも国際試合で目立つのはクリケットとラグビーだ。豪州で最も人気があるスポーツはオージーボール(AFL)で、2番目がラグビーリーグ、ラグビーユニオンは3番目だが、今の時期はすべてがワラビーズだ。今はAFLがないし、NRL(ナショナルラグビーリーグ)もない。ワラビーズが国際試合を戦うので、みんなが興味を持っている」

――でも最近ワラビーズの成績はよくない。

「よくないわね。難しい時期を迎えている。でもワラビーズというブランドはまだとても強い。世界の人々が豪州をポジティブに見るのにつながっている。豪州内でグッズや消費財を宣伝しようとしている企業にとって、もしくはグッズやサービスを日本や欧州市場で宣伝しようとしている豪州企業にとっては、まだ強いブランド価値がある」

「ワラビーズというブランドはまだとても強い」とキャッスルCEOは強調する=AP

――SRの将来について、あなたの立ち位置は?

「まだ議論と交渉の最中だ。次の放映権の対象となる5年間で何がベストの契約か。SRはNZと豪州と南アフリカとアルゼンチンが共同事業のパートナーで、もちろん大会では日本が戦っている。日本のチームはプレースタイルなど多くの違いをもたらした。だから我々は、できれば日本がSRに関わり続ける方策を見つけるという議論を続けている」

「違い、という意味でいい貢献」

――サンウルブズのSRへの今までの貢献をどう見ているか。

「違い、という意味でとてもいい貢献をしている。違う国からの関心を持ってきた。チームのパフォーマンスも改善した。我々にとっての問題は、サンウルブズがいることで、日本ラグビー協会がフィールドでのパフォーマンスを改善し、フィールド外での商業的な貢献を続けられるかどうかだ」

――いまのところ、それはサンウルブズをSRにとどめるのに十分か。

「それはいま我々が交渉しているところだ」

――SRの将来像にどんなオプションがあるか。北米への拡大もあると聞いた。

「まず第一にフォーカスしているのは、できる限り最も競争的な大会をつくることだ。毎週試合をして、誰が試合に勝つかわからないという、結果に不確実性があるチームを確保すること。私はそれが一番の優先事項だと思う。新しい市場へ拡張する前に、それを確実にすることを考えないといけない。それと新しい市場でゲームを成長させ、商業的な貢献があるかどうかだ」

――南半球の国別対抗戦である「ラグビーチャンピオンシップ」に日本が参加する条件は?

「それについて長い議論をした上で、同じ質問をするだろう。新しいチームを入れることで大会に価値を加えることができるのか。もっと競争的な大会にできるのか。新しい市場を開くことができるのか。新しい観客がゲームを見たいと思うのか。もっと商業的な結果が得られるのか」

――つまりSRと同じ基準で考えるということか。

「その通りだ」

――少しプライベートな質問をしたい。円形脱毛症を患って、カツラをかぶっていると聞いた。いつ病気のことを公表したか。

「4年前かな。私ががんだと勘違いしてほしくなかったから。そして、ビジネスの現場にいる、脱毛症の若い女性たちが働くのが難しいと思ってほしくなかった。だから公にして女性たちを鼓舞したかった。男性は頭をそれるから対処しやすく、病気を受け入れやすい。でも女性には受け入れがたい。女性の外見は男性とは違う方法で判断されるから。特にビジネスの現場では。高い地位の仕事を持っていればなおさらだ」

「人々の違いにもっと寛容に」

――その観点から、最近、女性が男性と同じ賃金を求める運動や、#Me Too運動についてどう思うか。女性たちが大きな声をあげ始めた。

「私は人の平等性を完全に信じている。私たちは育った環境やジェンダーや人種や信条に関係なく人々を受け入れるために努力していて、それがとても大切だと思う。もっと人々の違いに寛容で、その違いを受容する必要があり、私はそのことに情熱を傾けている。CEOになってから、多くの若い女性が街中で立ち止まって、私に『おめでとうございます』と言う。彼女たちは『以前は思っていなかったけれど、女性が全国的なフットボールコード(ラグビーやサッカーなどフットボール競技の豪州での総称)のCEOになることが可能と信じる』と言ってくれる」

キャッスルCEOは19年W杯でワラビーズの優勝を目指している=ロイター

――協会のCEOになることについて、あなたの家族はどう言ったか。

「一緒になって13年のパートナーがいるけれど、彼はとても支持してくれた。NZ人の彼はワラビーズがプレーするとき、とても応援してくれる、NZと戦うとき以外はね。彼はワラビーズがオールブラックスと戦うときは少し複雑みたい。でも彼にとってはウィンウィンなの。ワラビーズが勝てば私がハッピーになるし、オールブラックスが勝てば彼はハッピーだから」

――来年のW杯でワラビーズに何を期待するか。

「すべてのチームが大会の最後にトロフィーを持つことを願っている。ワラビーズも同じだ。大会が始まったときにはベストのコンディションで、大会のすべてのステージでいいパフォーマンスを見せ、願わくば決勝に進出してほしい。前回は決勝に行ったけれど、来年は頑張ってもう1つ上(優勝)を目指している」

――ワラビーズの成績は別にして、CEOとして何を達成したいか。

「楽しいゲームなので、すべての人々にプレーする機会をつくりたい。体が大きくても、小さくても、男性でも女性でも。地方でもプレーできるし、大都市でもプレーできる。とてもポジティブな影響を地域に与える。人々が集い、健康のためになり、一生の友を得る。私はすべてのチームスポーツが好きだが、これらすべてのことがラグビーを特別なものにしている。草の根レベルでは健康的なスポーツであることを確かなものにし、ワラビーズで、なるべく多くの商業的な収入を得ることを確かなものにしたい」

(聞き手は摂待卓)

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