2019年6月16日(日)

ダイキン「盤石」の空調で次の一手、サービス拡充急ぐ

2018/11/26 18:14
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ダイキン工業は26日、欧州の大手冷蔵機器メーカー、AHTクーリングシステムズ(オーストリア)の全株式を約1100億円で取得すると発表した。2019年1月に買収を完了する。AHTはコンビニエンスストアには必ずある冷凍食品や飲料の冷蔵ショーケースを手がける。ただ買収の狙いは製品群の拡充だけにとどまらない。

記者会見するダイキン工業の十河政則社長(26日、大阪市内)

ダイキンの十河政則社長は記者会見で「(冷蔵機は)空調で培った冷媒などの技術を生かせる成長市場だ」と説明した。空調との相乗効果で欧州での冷蔵機事業の売上を現在の2倍の1700億円に引き上げる計画だ。 ダイキンの過去の買収額としては空調大手の米グッドマン・グローバル(約3000億円)、マレーシアのOYLインダストリーズ(約2400億円)に次いで3番目。これまではいずれも空調事業で、冷蔵機器の大型買収は初めてだ。

ダイキンは空調事業が好調で19年3月期まで6期連続で営業最高益を更新する見通しだ。社内では「新興国を中心にエアコンを売るだけでまだ成長できる」という声がある一方、先進国では大手エアコンの単品売りから、その後の保守サービスに着々シフトしている。構造変化への対応を迫られている。

たとえば北米市場では業務用空調大手の米キャリアなどは全体の6~7割をサービス事業で稼ぐ。ダイキンは3割程度にとどまっている。

今回買収するAHTは、遠隔の故障診断など保守サービス分野にたけている。ダイキン幹部によると「冷蔵ショーケースは、製品に故障があった場合、保守要員が数時間で駆けつける」という。放置すれば商品の廃棄につながり、最悪の場合小売店から補償を求められるケースもある。こうした迅速な保守サービスのノウハウを取り込むのがねらいだ。

ダイキンはかつてコンビニ向けに空調と冷蔵ショーケースを合わせた省エネサービスを提案していたが、ライバルだった三洋電機(現パナソニック)の追い上げにあった。自前のショーケースを手に入れ、巻き返す考えだ。

「米グーグルがエアコンに参入すれば大きな脅威だ」。ダイキン幹部はこう話す。唐突な心配にも思えるが、自動運転などで大手メーカーとITの巨人が覇権争いをしている。途上国に需要があるとはいえ、空調を拡大させるだけでは今後現れる巨大なサービスのパーツの一つになってしまうとの危機感がある。

ダイキンは今年初めて家電見本市のシーテックに出展した。寝室の天井の照明にセンサーを取り付けて生体情報を取得し、明るさや二酸化炭素(CO2)の濃度を調整したり、エアコンや空気清浄機と連動させたりして睡眠に適した環境を自動でつくる新技術などを公開した。

IT大手に対抗するには人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」関連の技術者育成がカギを握る。

ダイキンの十河政則社長は今春、取引先の機械商社の会合のあいさつで「ゆでガエル」の逸話を引いた。カエルを水にいれて加熱すると温度上昇に気づかずにいつの間にか死んでしまう――。

生き残りのためには「環境変化を先取りする必要がある」(十河社長)。空調が盤石だからこそ、次の成長の種をまく。

(伊藤大輔)

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