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言葉でたどる大谷翔平の18年シーズン(前編)

スポーツライター 丹羽政善

大事な場面で三振を取れば、マウンド上で感情をあらわにする大谷翔平(エンゼルス)だが、記者会見の表情から読み取れるものは決して多くはない。うれしいのか、悔しいのか。その日、たとえば2本塁打を打ったのか、3三振を喫したのか。

とはいえ、ときにその素顔であったり、価値観をのぞかせたりすることがある。

大谷が2018年シーズン、節目で残した言葉をたどる。

大谷のキャンプ初日は2月14日のこと。米アリゾナでは珍しく雨になった。練習後、キャンプ地に隣接したホテルの、結婚式を行えば300~400人は入れそうなボールルームを貸し切って、記者会見が行われた。

いい意味で頑固、柔軟性も

日米の記者から多くの質問が飛ぶ中、米大リーグへの適応をどうイメージしているかと問われて、こう話している。

「まずは何も変えずに、自分がやってきたことをベースにしっかり取り組んでいく。変えなければいけないところは、その都度、変えていければいい。まずは今までやってきたスタイルを、しっかりここではっきり発揮できるようにやりたいなと思います」

そのことはチームからも認められていた。

「やりやすいようにやってほしいって言われています。トレーニング一つをとっても、どのくらい満足しているかということも報告もしますし、次にどういうトレーニングをしたいのかという意見交換もするので、そういうような感じで自分の望んでいる方向にいきます」

いい意味で頑固。それでいて柔軟性が感じられた。

3月29日のアスレチックス戦で、メジャー初打席初安打を放った=共同

3月29日、オークランドでアスレチックスとの開幕戦を迎えると、初打席で初球を捉え、右前に安打を放った。

「初打席に向かうときは、おそらくこの先忘れない打席になるのかなと思う。すごく特別な感情がある」

このときは「8番・指名打者」での出場。やがて大谷はチームの中軸を任されることになる。

4月1日、メジャー初先発。6回を投げて3安打、3失点、6奪三振。アスレチックス打線はフォークボールにまるでタイミングが合わなかった。まずはメジャーのマウンドから見える景色を聞かれると言った。

「すごく周りが近く感じましたし、雰囲気的には(キャンプ中の球場と)全然違うのかなという感じがする」

スライダーを本塁打されたが、解説が興味深い。

「本塁打を打たれたスライダーは、腕を振るポイントが少し遅れていた。そこは工夫が必要」

原因はスライドステップにあったとのこと。大谷は「体重が前にいきすぎていた」と説明。なぜ、体重が前にいきすぎたのかも分析できていた。

「ブルペンよりもマウンドの方が傾斜もきつかったので、そういうのを一個一個自分で感じながら。感じて変えるのと、そうでないのとでは違う。しっかり見ながら工夫したい」

4月1日のアスレチックス戦でメジャー初登板し、初勝利を挙げた=共同

4月3日、ホーム初戦の初打席では衝撃的な本塁打。ダッグアウトに戻ると、サイレントトリートメントで迎えられた。

「何かよくわからなかったので、何かあったんだろうなと思って、ちょっと(時間が)たって気づきました」

新人の選手が初本塁打を打つと、あえてチームメイトが無視をする。メジャー独特の儀式だが、大谷のキョトンとする表情が米国内でも話題になった。

さて、チームメイトからは「ナイスバッティング」と祝福されたそうだが、マイク・ソーシア監督(当時)からは「風だよ」と言われたとのこと。

大谷は苦笑しながら続けた。

「『その通りです』と言いました」

キャンプとの違い明確に

なお、このころ、キャンプとの違いが明確になった。キャンプでは右足を大きく上げていたが、3月26日に行われたドジャースとのオープン戦から足を上げず、ヒールアップしてタイミングを取るようになった。そして、その効果はもはや、疑いようがなかった。

「長くボールを見ることができている。見た目には大きく変わっていますけれど、多少動きを省いただけなので、自分の中では打撃のスタイル的には大きく変わっていないです。継続して取り組んでいることの方が大きい。それがいい方向にいかなくなったときに継続していくのか、また変えなきゃいけないのか、自分次第。その準備をしっかりしたい」

4月8日、前回と同じアスレチックスを相手に2度目の先発。このとき、七回1死までパーフェクトという圧巻の投球を続けた。

もっとも試合後、人生で一番かと聞かれると、こう言った。

「人生一番は小学校くらいのときでした」

完全試合は知っていたが、意識はなかったそう。

「安打を打たれていないなというのは知っていましたけれど、完全試合をしようという感じはなかった。むしろいつ(安打が)出るかという感じで待っていた。(初安打が)出たときにどう気持ちを整理して次の打者に向かっていけるか、というのが大事だと思う。そういう意味では打たれた後に四球を出したのは、きょうのよくなかったところ」

走者を出していないことは五回ぐらいに気づいたそうだが、気持ちのうえで打たれたときの準備をしていたため、大きく動揺することもなかった。

「来るときが来た、というか。そこを準備して、初回からというか、ずっと抑えていた。そうなったときにしっかりと次の打者に向かっていける準備はしたいな、と思っていたので、特に何もなかったです」

一方、大谷が打席に立つと、右方向に相手がシフトを敷くようになった。ある意味、相手が大谷を認めたともいえたが、4月19日の試合後、本人はこう話した。

「特にシフトを気にして打撃を変えることはないですし、今まで通りいきたい。むしろヒットコースが広がることもあると思う。きょうはたまたま(シフトに)引っかかりましたけれど、そういう可能性もあると思っている」

大谷が一歩ずつ課題を乗り越え、メジャーに適応していった=共同

再び投手・大谷に話を戻すと、4月24日のアストロズ戦では時速100マイル(約161キロ)以上を6度も計測し、敵地のファンをうならせた。そのときの大谷の言葉。

「勝手にいいシチュエーションで、やっぱり点をあげたくなかった。打者も素晴らしい打者が並んでいる中で、自分の持っているもの、出せる以上のものを出したい。そういう気持ち」

「経験する価値のあること」

その後、シアトルへ遠征。すでにイチロー(マリナーズ)は選手登録を外れ、同じフィールに立つことはなかったが、大谷は珍しく興奮気味だった。

「野球教室にきた小学生がすごく張り切って、いいところを見せようっていう、そういう気持ち」

5月6日、今季5度目の先発。マリナーズを相手に6回を6安打、2失点でまとめ、3勝目をマークした。注目したのはリリースポイント。前回のアストロズ戦では球こそ速かったが、リリースポイントが下がり、それが続けば故障のリスクになり得たが、大谷は修正していた。

「前回がよくなかったので、戻したというよりはよくなかった点を直したという感じなので、その繰り返しかなと思います。きょうに関しても悪かった点はフォームにもあるので、『あぁ、ここが良くなかったな』と思う点は次回以降にまた変えていきます。もしかしたら、またそれがよくない可能性もあるので、それは一回一回勉強かなと思っています」

5月16日、好投手のジャスティン・バーランダー(アストロズ)と対戦。4打数無安打に抑えられ、3つの三振を喫した。しかし試合後、むしろ大谷はうれしそうだった。

「(お金を)いくら払ってでも、経験する価値のあること。それくらい素晴らしい投手。これをどう(自分に)プラスにしていくか」

大谷はこうした対戦を望んで、海を渡ったのかもしれない。

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