肉薄 練り上げた製法 不二製油の大豆ミート(もっと関西)
ここに技あり

2018/11/26 11:30
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唐揚げにハンバーグ、ビーフジャーキー――。テーブルの上に並んだ数々の"肉料理"は、大豆を原料とする植物肉にはとても見えない。試しに唐揚げを1つ割ってみると、まるで本物の鶏のもも肉のように繊維が裂けた。

大豆でできた「鶏の唐揚げ」。割ってみると本物の肉のよう

大豆でできた「鶏の唐揚げ」。割ってみると本物の肉のよう

見た目だけではなかった。「肝心の味は?」と興味津々にほおばると、口の中で肉汁がじゅわっと広がった。しょうゆ味の風味も鶏の唐揚げそのもの。そうとは知らずに食べたなら、大豆肉と気づかない人もいるはずだ。

食品素材メーカーの不二製油が開発した。見た目や食感、味を本物の肉に近づけた大豆ミートは健康志向で需要が拡大する。レストランに卸しているほか、ビーフジャーキーなどが小売店でも販売されている。阪南工場(大阪府泉佐野市)内の研究所では肉党の心をつかもうと、品質向上への研究開発が進む。

原料には油を搾った後の脱脂大豆を使用する。細かい粉末になるまで砕き、エクストルーダーと呼ばれる熱や圧力を加える機械に水と一緒に入れる。設定温度は120~190度。機械内で脱脂大豆の粉末を水蒸気爆発させることでポップコーンのように体積が膨張し、肉のような繊維状の組織ができあがる。同社ではこれを粒状大豆たんぱくと呼んでおり、調理の際は水で戻して使う。

脱脂大豆にでんぷんや小麦粉などを加えることで牛や鶏、豚の肉質を再現する。カギを握るのは原料の配合割合と粒の大きさ。着色料も使用して見た目もそっくりに仕上げ、視覚に訴える。ハンバーグは数種類の粒状大豆たんぱくを組み合わせてつくることも。取りそろえる粒状大豆たんぱくの種類は50~60種類だ。

厚揚げなど多くの大豆製品を扱ってきたノウハウを生かし、1960年代から開発を進めてきた。担当の坂田哲夫氏は「昔は食感がスポンジのようになるなど課題が多かった」。原料の配合割合と機械の温度設定の組み合わせを無数のパターンで試した末に現在の再現技術がある。

配合割合だけでは独特の臭みは消えない。水で戻した粒状大豆たんぱくの状態で試食したら、味はまだ豆に近い。"牛や豚"のひき肉に調味料を加えハンバーグに調理することで豆っぽさがなくなる。

ただ、半世紀以上の研究を重ねても、肉料理の王様「ステーキ」だけはどうしても本物そっくりに再現できない。「1枚の大きな肉に独特の繊維感を出すのは至難の業」(坂田氏)だ。塩こしょうなどシンプルな調味料しか使えないため、大豆独特の味や臭いも消しづらい。悲願といえるステーキの再現技術の確立へ開発陣の試行錯誤が続く。

文 大阪経済部 渡辺夏奈

写真 淡嶋健人

カメラマンひとこと 白衣の社員が開発を進める研究所の一室においしそうな料理が用意された。白い皿にころころと並ぶキツネ色が食欲をそそる一品。何も知らず撮影に臨めば間違いなく鶏の唐揚げと思っただろう。"肉質"も本物のようだと聞いたので1つ割ってもらう。繊維のリアルさを強調し、「食べてみたい」と感じてもらえるような写真を目指した。
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