2019年1月16日(水)

ロヒンギャ難民、進まぬ帰還 国連「再び迫害の恐れ」

東南アジア
2018/11/22 18:45
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【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害問題で、バングラデシュに逃れた約70万人の難民の帰還が一向に始まらない。両政府は11月半ばから帰還を始める方向で準備を進めたが、国連などが現状では戻れば再び迫害を受ける恐れがあると指摘。難民自身も帰還に反発し、実現しなかった。ミャンマー政府は事態打開を急ぐが、思惑どおりにはいかない情勢だ。

帰還開始の方針に反発し、抗議の声をあげるロヒンギャ難民の人々(15日、バングラデシュ南東部)=ロイター

両政府が難民の帰還についての枠組みを合意した覚書に署名して23日で1年になる。難民帰還が始まれば、初の本格的な帰還作業となるはずだった。10月末、政府間で帰還開始を確認し、第1陣として約2250人の帰還者リストを作った。

だが、ロイター通信によると国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の意思確認作業では対象者はいずれも帰還を拒んだ。帰還開始予定日の15日には難民キャンプで大規模デモも発生。結局「帰還希望者がいない」(バングラ政府当局者)として断念した。

難民が帰還に応じないのは、迫害の根本原因が無国籍状態にあることだと考えているためだ。国籍がなければ治安上の脅威と見なされ続け、行動範囲は制約される。

ミャンマーは仏教徒が多数派で、政府はロヒンギャを英国統治時代以降の侵入者と見なし、自国民族と認めていない。難民帰還を進めるアウン・サン・スー・チー国家顧問も、国籍問題では「現行法に基づいて対応する」と慎重だ。

現時点での難民の帰還には国連も懸念を表明していた。バチェレ国連人権高等弁務官は13日、「現時点で帰還を始めれば、難民を人権侵害の渦中に放り出すことになる」とし、帰還は時期尚早だと明言した。

バングラデシュ政府にも難民の定住化は回避したいという本音がある。中国の仲介でミャンマーとの協議に応じ、帰還の準備を進めたのはそのためだった。だが難民が帰還を拒否する中で作業を強行すれば、混乱拡大は避けられない。バングラデシュは12月末に総選挙があり、年内は帰還作業の再開は難しそうだ。

膠着状態が続けばミャンマー経済にも影響が及ぶ。人権問題を重視する欧州連合(EU)は、最貧国向けの関税免除制度の適用を停止する検討に入った。仮に適用停止になれば、近年拡大してきた縫製加工業などの輸出競争力が落ち、経済的なダメージは大きい。

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