広がるVR、小売り・採用・軍事… 注目19業界

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2018/11/26 2:00
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7.製造・物流

VRやARは製造や物流、熟練した技術が必要な専門職の分野で特に役立つ可能性がある。ARを使えば、担当者は実際に見ている風景にホログラフィーの画像「オブジェクト」や指示を重ね合わせることができる。これは大型機械や特殊な装置の操作方法を学ぶのに非常に有効だ。

例えば、ARの開発を手掛けるイタリアのInglobe Technologies(イングローブ・テクノロジーズ)は、エンジンの修理を学習するために、車のボンネットの下に関連エリアを表示する。

こうした使い方は教育分野でも有用だ。自動化の台頭で多くの単純作業が淘汰される可能性があるため、イングローブのようなARツールは溶接や配管、電気システムなどの熟練した技術が必要で、需要の多い専門職の養成にも役立つ。

8.ヘルスケア・医療

ARは医療分野での患者の教育にも活用できる。多くの企業はARで患者の健康情報を視覚化するカスタマイズ可能なアプリを病院に提供しようとしている。

米AccuVein(アキュベイン)は患者の血管や弁を看護師や医師に示すため、皮膚の上に投影するスキャナーを開発した。この技術を使えば、血管を一発で見つける確率が3.5倍高まるという。

医療分野でのVRの応用は遠隔医療から「その場にいるような」体験ができる介護まで果てしなく広がる。介護施設の入居者はゴーグルを装着してVR旅行を楽しみ、スペインのPsious(サイオス)などはVRを使ったセラピーで行動や精神衛生の問題の治療に取り組んでいる。

9.ジャーナリズム・メディアの発信

メディアもVRの導入が最も盛んな分野の一つだ。米紙ニューヨーク・タイムズはすでにVRを使った報道の先駆者であり、VRアプリ「NYTVR」で今までになかったビジュアルの記事を配信している。

同社は15年10月、アプリの提供開始に併せて読者にグーグル・カードボード100万台を配布。米CNNも同月、米大統領選に向けた民主党の討論会を初めてVR向けに放送した。

他の多くのメディアも読者に記事の「内部」を体感してもらうため、VRの活用を検討している。米通信大手ベライゾン傘下のAOLは16年、VRコンテンツの製作を手掛ける米RYOT(ライオット)を買収し、VRへの関心を示した。米Emblematic Group(エンブレマティック・グループ)もVRやARを使って「没入型ジャーナリズム」を普及させようとしている新興企業だ。

10.映画・娯楽

娯楽業界ではVRを使うことで物語と観客との境界をなくし、映画製作者は多様な空間や視点を実験できるようになる。このため、ゲームと物語性の強い娯楽との線引きが曖昧な実験的作品が生まれている。

こうした新たなアプローチは「シネマティックVR」と呼ばれる。米Kite & Lightning(カイト・アンド・ライトニング)や英Limitless(リミットレス)、英Blend Media (ブレンドメディア)などのスタートアップ企業がこの分野に取り組んでいる。例えば、カイト・アンド・ライトニングは昨年、米トライベッカ映画祭で披露した「観客参戦型」の映画「ベビロン・バトルロワイヤル」を製作した。

ソニーは昨年、主流のポップカルチャーにVRを普及させる取り組みの一環として、テレビドラマ「ブレイキング・バッド」をベースにした「ゲーム以外のVRプロジェクト」に着手した。

ARは娯楽業界ではまだVRほど浸透していないが、いずれは観客の現実世界にストーリーを組み込むために使われる可能性がある。例えば、スマートフォン(スマホ)のカメラで送った情報に基づき、お気に入りのドラマのワンシーンが自宅のリビングで展開されるようになるかもしれない。

11.建設・不動産

VRが不動産の開発と販売を一変させる可能性がある。建築家はVRを活用したデジタルモデリングの可能性に期待している。仏Augment(オーグメント)などが提供するツールを使えば、建築プランや販促資料など2次元の素材を3次元モデルに重ね合わせることができる。さらに、米DAQRI(ダクリ)はサーマルビジョンを提供するスマートヘルメットを開発し、建設作業員などの工員に作業の指示を出す。

不動産業者はVRを使うことで建物が未完成でも買い手があたかも実際に現場に足を運んだかのような体験を提供できる。米Matterport(マターポート)は17年、ニューヨーク・タイムズ紙と共同で高級物件の一部のVRツアーを実施した。

12.自動車

自転車産業でのVR活用はコンセプトの段階から始まる。米フォード・モーターは14年、仮想環境で車の設計、試作車の製作・評価を素早く進めるため、米オキュラス・リフトと提携した。

VRは没入型の自動車ツアーや試乗体験にも適している。例えば、スウェーデンのボルボ・カーが英Framestore(フレームストア)の協力を得て開発したVRアプリ「ボルボリアリティー」を使えば、グーグル・カードボードを装着して多目的スポーツ車(SUV)「XC90」を体験できる。

独アウディは利用者がショールームだけでなく、車のあらゆる部分を見ることができるARアプリを開発した。走りを確認するために、自分だけのテストルートを作ることも可能だ。

13.宇宙探査

VRは私たちをまさに別世界に連れて行ってくれる。国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士は米マイクロソフトの「ホロレンズ」とカナダのLibrestream Technologies(リーブルストリーム・テクノロジーズ)の動画プラットフォーム「オンサイト」を使い、宇宙空間で研究や実験に取り組んでいる。米航空宇宙局(NASA)はVRを活用し、仮想空間で火星の表面を再現しようとしている。

VRはNASAの宇宙探査の効率を高めている。研究者は従来の区画決定方法よりも「火星のある地点と別の地点との距離を2倍、方向を3倍も正確に割り出せるようになった」という。

NASAはこれを生かして宇宙飛行士を火星の表面に実際に接近させたいと考えている。私たちもいずれVRでこのミッションを体験するようになるだろう。

NASAジェット推進研究所のクリエーティブ・ディレクター、マシュー・クローゼン氏は「火星に実際に降り立つ日が待ち遠しい」と話す。「図書館や学校、自宅の地下室で、誰もがこの没入型テクノロジーを使えるようになる未来を思い描いている。この新しい世界の探索にみんなで一緒に参加できるようになるのだ」と目を輝かせる。

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