岡山、豪雨越え躍進へ

2018/11/23 12:00
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岡山経済が力強さを増している。西日本豪雨の影響が懸念されたが、進出企業の増産や研究開発投資が相次ぐ。国内最大となる太陽光発電所も稼働を始め、全国の商工会議所で初の航空宇宙関連産業を推進する組織も立ち上がった。2019年には瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)や現代アートの国際イベント「岡山芸術交流」も開催される。中四国交通の要でもある岡山の観光にも注目が集まりそうだ。

■製造業、成長引っ張る

「トータルでマイナス面は残っておらず、前向きな景気循環を途切れさせるには至っていない」。日銀岡山支店の藤田研二支店長は、9月の全国企業短期経済観測調査(短観)会見で、7月の西日本豪雨の岡山経済への影響について強調した。

倉敷市真備町地区の大部分が冠水し、県内で66人の命を奪った豪雨。県のまとめでは11月15日現在、商工被害は約210億円、農林水産被害は約266億円にのぼる。それでも岡山経済は製造業がけん引し堅調だ。日銀岡山支店は、スマートフォン(スマホ)向けの電子部品の生産が増え、自動車部品も受注が増えていると指摘する。

これを裏付けるように11月、村田製作所の生産子会社、岡山村田製作所(瀬戸内市)は新生産棟建築に乗り出した。スマホや自動車向けに世界中で需要が拡大している電子部品、積層セラミックコンデンサー向け原料の生産能力を増強する。総投資額は100億円。1年後の竣工をめざす。

住宅建材大手の大建工業は10月、新たな研究開発拠点として岡山工場(岡山市)内に「DAIKEN R&Dセンター」を開設した。新素材開発などの基礎研究から、それを製品化していく応用研究、製造技術開発など全社的な研究開発を担う拠点となる。

岡山県の「大型投資・拠点化促進補助金(R&D型)」制度と、岡山市の「再投資・拠点強化促進奨励金」制度の、ともに適用第1号案件となっている。県の補助金は、岡山村田製作所の新生産棟やJFEスチールが西日本製鉄所倉敷地区(倉敷市)で実施する約400億円の大型投資にも交付され、立地企業の新規投資を後押しする。

西日本豪雨で被害を受けたが、岡山は降水量1ミリ未満の日が日本一多い「晴れの国」。その特長を生かし瀬戸内市の塩田跡地に10月、稼働中の大規模太陽光発電所(メガソーラー)では国内最大となる「瀬戸内Kirei太陽光発電所」が操業を開始した。出力は約23万5000キロワット。1年間で一般家庭約8万世帯分の電力を供給できる。県内には19年秋の操業をめざし、美作市で出力25万7700キロワットのメガソーラー建設も進んでいる。

戦前、軍用機を生産していた三菱重工業水島航空機製作所から発展した倉敷市水島地区では、航空宇宙産業への取り組みが離陸した。倉敷商工会議所が呼びかけた「航空宇宙産業推進協議会」に、会員企業を中心に45社が集まった。航空宇宙関連産業を推進する組織の設立は、全国の商工会議所でも初めてという。今後の岡山経済を発展させるロケット役として期待が集まっている。

■瀬戸大橋・岡山空港30周年、大動脈 高まる存在感

新幹線の全列車が岡山駅に停車し、高速道路も東西南北に延びる結節点・岡山にとって、瀬戸大橋は欠かせない存在だ。4月に開業30周年を迎えて、本州と四国をつなぐ大動脈としての存在感は高まる一方だ。3月に同じく30周年を迎えて新たに「岡山桃太郎空港」の愛称が付いた岡山空港でも、インバウンド(訪日外国人)を中心に利用者数が増えている。

瀬戸大橋の総事業費は約1兆1700億円。本四3架橋で唯一の鉄道併用橋で、新幹線の走行にも対応する。2017年度の自動車通行量は、3年連続増加の約822万4000台と過去最高を更新。これまでの段階的な料金引き下げもあり、初年度の88年度(約385万2000台)の2.1倍まで増えた。

四国4県では四国新幹線を求める声が根強く、「新幹線規格」の瀬戸大橋が背中を押す存在になっている。4県などで構成する四国新幹線整備促進期成会は、岡山を起点として4県の県庁所在地を結ぶ経路で整備計画の実現を目指している。

岡山空港には国内線3路線、国際線4路線が就航。国際線のうち台北線は3月から毎日運航になったほか、11月28日からは香港線が1往復増えて週3往復になる。

岡山県によると、17年度の利用者数は前年度比5.7%増の約152万人。国際定期路線の伸びがけん引し、3年連続のプラスで10年ぶりに150万人を超えた。今後も交通網を組み合わせた新たな観光ルートの開発など、利便性を強みに利用者数の増加を狙う。

■芸術交流、観光に弾み

2019年、岡山は現代アートの世界に包まれる。犬島(岡山市)など瀬戸内の島々を主な舞台とした瀬戸内国際芸術祭秋会期と同時期に、岡山市中心部では国際イベント「岡山芸術交流2019」が開かれる。県外客やインバウンド(訪日外国人)をターゲットに、新たな観光の起爆剤として期待が高まっている。

「A&C」で展示が始まった作品を解説する総合ディレクターの那須太郎氏(11月、岡山市の林原美術館)

「A&C」で展示が始まった作品を解説する総合ディレクターの那須太郎氏(11月、岡山市の林原美術館)

岡山芸術交流は石川文化振興財団の石川康晴理事長(ストライプインターナショナル社長)が総合プロデューサーを務める。16年に次ぐ2回目は19年9月27日~11月24日までで、15~20人の芸術家が参加予定。前回より3割多い2万8000枚の鑑賞券販売を見込み、台湾や香港など東アジアからの集客増も狙う。

既に市内の美術館などを会場に、プレイベント「A&C」が開催中。一方、瀬戸芸秋会期は9月28日から11月4日までで岡山芸術交流と重なる。連携への模索は進んでおり、期間中に犬島など瀬戸芸の会場と岡山市中心部を結ぶレストラン船の運航案も浮上している。

■岡山駅前 進む再開発

岡山市内で再開発の動きが加速している。JR岡山駅の東口周辺を中心に、各事業者は魅力とにぎわいの創出へ知恵を絞る。市内ではマンションの建設も相次いでおり、今後数年で街の姿が大きく変わりそうだ。

飲食店や映画館などが立ち並ぶ駅前町地区で、2023~27年度の完成をめざして再開発計画が進む。準備組合が野村不動産などを事業協力者に選定し、約1万3000平方メートルの敷地に28階建てマンションや24階建てホテルなどを建設する。近くの「市民の台所」岡ビル周辺でも24年度の完成に向けてマンションやホテル、商業施設の建設プランが始動している。

駅から南下したイオンモール岡山向かいにある旧岡山ビブレ跡はストライプインターナショナル(岡山市)、両備グループ(同)、源吉兆庵ホールディングス(同)が取得。ホテルと物販・飲食の複合施設やオフィス、マンションが立ち並ぶ予定になっている。

さらに市役所方面に南下した旧イトーヨーカドー岡山店跡では、両備グループが約1万7000平方メートルの敷地に岡山県内最高層となる地上37階建てマンション棟、オフィスや店舗を組み合わせた商業棟を建設する。

一方、西部の問屋町地区では10月、天満屋などがイベントホール跡に住宅展示場と商業施設を組み合わせた「問屋町テラス」を開業した。同地区から北上したJR北長瀬駅近くの岡山操車場跡では、大和リースが19年3月の開業をめざして「BRANCH岡山北長瀬」(仮称)を建設中だ。健康・医療・福祉関連の施設を軸に、スーパーや書店、カフェなどが入る。

中心市街地にある表町商店街南端の千日前地区では、岡山市が市民会館と市民文化ホールを統合・移転させ「岡山芸術創造劇場」(仮称)を22年秋に開業させる予定だ。

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