2019年5月20日(月)

「長崎証言の会」関心薄れる中、被爆体験継承誓う

2018/11/21 11:41
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被爆者の証言集を発行している長崎の市民団体「長崎の証言の会」。この秋発行の証言集は通算75巻目となる。戦後73年、原爆への関心が薄れゆくのを肌で感じているからこそ、貴重な体験を今後も継承し続ける。

「長崎の証言の会」が発行した被爆者証言集の一部。左上が創刊号=共同

被爆者証言集の創刊号「長崎の証言」を手にする事務局長の森口さん(7月、長崎市)=共同

「血液異常や血圧値は被爆の影響とみられる差異は認められず、生活も国民一般との間に著しい格差はない」。国が1965年に初めて実施し67年に公表した「原子爆弾被爆者実態調査」の報告。被爆者らは実感と乖離(かいり)した結論に反発した。

原爆体験を風化させまい――。長崎市で翌年、長崎造船大(現長崎総合科学大)で教授だった鎌田定夫さん(2002年に72歳で死去)の呼び掛けで、前身となる刊行委員会が発足した。

終戦から24年後の69年。米軍が長崎原爆を投下した日に合わせ、8月9日に創刊号「長崎の証言」を自費出版した。A5判より一回り大きい、計44ページ。鎌田さんと会を支え、長崎市で被爆者治療に生涯をささげた秋月辰一郎さん(05年に89歳で死去)の被爆体験記の英訳や、被害状況を示した地図なども収録した。

爆心地から約3キロの仮事務所で、鎌田さんらが本業の合間を縫って編集に情熱を注いだ。被爆体験をつづった手紙が、次々と届く。日記に詩、在日韓国・朝鮮人や在外被爆者のエピソード、原爆をテーマにした専門家の研究成果……。年1~4巻のペースで刊行し、時に1冊300ページを超えることもあった。

81年末、広島市で姉妹組織「広島の証言の会」が発足。87年夏まで約5年半、「ヒロシマ・ナガサキの証言」を共同編集した。

「長崎の証言の会」は寄稿だけでなく、被爆者宅を訪ねて話を聞き取り、今日までに延べ千人超の声を集めた。一部は英語や中国語にも翻訳された。女優の渡辺美佐子さん(86)らでつくる「夏の会」は証言を基にした朗読劇を上演している。

被爆者で「長崎の証言の会」事務局長の森口貢さん(82)は「3世や4世の時代となった今こそ、体験継承が大事」と強調する。

だが、現実は厳しい。活動資金を寄付する会員の数は最盛期の70年代半ばに2千人近くいたが、今は約230人。最近は年に1巻、800部を発行するが、売れ残ることもある。

こうした中、中心メンバー最若手の山口響さん(42)が4年前、編集長に就いた。「被爆者が発した理念が、社会に存在し続けるようになってほしい」。やがて来る"被爆者のいない時代"をにらみ、76巻目以降の取り組みを模索する。〔共同〕

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