2019年6月25日(火)

需要減や規制強化で四面楚歌(そか)の化学業界(The Economist)

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2018/11/21 2:00
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The Economist

米国の陪審は民事裁判で巨額の賠償金の支払いを命じることで知られる。カリフォルニア州の陪審は2002年、米たばこ大手のフィリップ・モリス・インターナショナルに対し、あるヘビースモーカーのがんの原因になったとして280億ドルもの賠償金を支払うよう評決を下した。もっとも、その後の判決で賠償額は2800万ドルに下がった。このため、同州の陪審が今年8月、米種子大手モンサントに対し、学校の用務員だったドウェイン・ジョンソンさんに2億8900万ドルの賠償を命じる評決を下しても、2カ月前にモンサントの買収を完了した医薬・農薬大手の独バイエルは、心配は無用だと株主に説明した。ジョンソンさんはグリホサートを主成分とする除草剤「ラウンドアップ」のせいで末期がんになったと主張。モンサントは陪審が「論理的根拠に乏しいニセ科学」に基づく評決だとして、この判断は覆されるとタカをくくっていた。

農薬やプラスチックへの批判の高まりは、化学業界の頭痛の種だ(写真は5月、ドイツのボンでバイエルとモンサントとの合併に反対を唱える環境保護活動家ら)=AP

農薬やプラスチックへの批判の高まりは、化学業界の頭痛の種だ(写真は5月、ドイツのボンでバイエルとモンサントとの合併に反対を唱える環境保護活動家ら)=AP

ところが裁判所は10月、陪審が認定した事実を追認した。賠償金は減額されたが、なお7850万ドルに上った。バイエルは11月13日、同様の訴訟が9300件に達していることを認めた。賠償総額が数百億ドルに膨れ上がる可能性は明らかだ。

バイエルは依然としてラウンドアップとがんとの関連を完全に否定しており、同社のヴェルナー・バウマン社長は「徹底的に」争う構えだ。だが、ジョンソンさんの弁護人ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は、自分たちは勝ち続けると確信している。「モンサントの頭痛の種になり、バイエルの毒薬になるほど勝ってみせる」と。ラウンドアップ関連商品は、モンサントの営業利益の7割を稼ぎ出す。最初の判決以来、バイエルの株価は下がり、時価総額は270億ユーロ吹き飛んだ。

評決は化学業界全体に波紋を広げている。独BASFや米ダウ・デュポンなど他の農業用殺虫剤大手のグリホサートへの依存度は低いが、バイエルと同様に株価が下落している。投資家は化学品への反動に神経をとがらせている。化学品業界の農薬部門の年間売上高は3800億ドル、石油化学品は同8000億ドルに上る。

■中国企業の台頭で競争激化

化学品業界にとってこの20年間は黄金時代だった。2000~15年の株主の投資収益率は300%と、全業種の企業の3倍だ。中国での消費拡大により、化学製品の需要の伸びは国内総生産(GDP)のそれを上回った。企業の合併が進み、特に農薬分野での価格競争が減った。貿易障壁の撤廃で、各社は低コスト地域に生産拠点を移管できた。

だが、米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーのフロリアン・バッド氏は、潮目が変わったと指摘する。消費者がプラスチック使用量の少ない高級品やサービスへの志向を強めているため、中国での需要は減速する可能性が高い。中国政府は化学品の国産化だけでなく、化学企業の海外進出も図っており、これが価格下落圧力となっている。例えば昨年、スイスの農薬大手シンジェンタを430億ドルで買収した中国化工集団(ケムチャイナ)は、今やアフリカや中南米で、欧米大手から市場シェアを奪っている。米中の貿易戦争は業界のグローバルサプライチェーンに打撃を与え、コストの上昇を招く。

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