実は多い2人目不妊 早めに受診、子育てと仕事が壁に

「そろそろ赤ちゃんが欲しい」と思っても、すぐに妊娠できるとは限りません。妊娠・出産が気になり始めたら、自分の体と向き合うところから始めましょう。一人目は特に意識しなくても妊娠したのに、二人目はなかなか授からないというケースは少なくありません。二人目不妊の原因や問題点について、「二人目不妊治療専用フロア」を備える木場公園クリニック院長の吉田淳医師に聞いてみました。
62.6%が第二子のときに不妊治療を経験
夫婦の間の生殖機能に大きな問題がなく、一人目を授かったのに、なかなか二人目を授からない状態を「二人目不妊」と一般的に呼びます。2017年5月に日経DUALが行ったアンケート結果によると、不妊治療経験者147人の中で第二子のときに不妊治療を経験した人は62.6%。その内51%もの人が「第二子で初めて不妊治療をした」と答えています。
木場公園クリニックの吉田淳院長によると、「二人目不妊の決まった定義はありませんが、タイミングを合わせて性交渉をしても、半年くらい授からなければ、二人目不妊と捉えて、治療を始めるタイミングだと言えます」。
● 卵子の質の低下
「初産年齢が上昇している現在、二人目を望む年齢も必然的に上がっています。一人目のときに比べると、二人目ではそれだけ加齢によって卵子の質が低下しているため、妊娠しにくい状態になっています」
● 多忙な毎日でセックスレスに
「育児・仕事に追われて性交渉を持つ気になれない人は非常に多く、妊娠のチャンスが激減してしまいます。排卵日を狙って性交渉をすることは男性にとってもプレッシャーになり、勃起障害を引き起こす原因にも」
● 子宮トラブルの増加
「卵子に比べると、子宮は加齢による影響を受けにくいですが、加齢にともなって、子宮筋腫や子宮腺筋症などの子宮のトラブルが増えると、妊娠しにくくなることが考えられます」
● 男性側の不妊原因の増加
「ストレスや加齢によって精子の質が低下するケースがあります。ある男性のケースでは、数年で精子の数が10分の1まで減りました。二人目不妊を疑ったら、精子の検査も併せて受けることをおすすめします」
● 授乳後の影響
「母乳を作るプロラクチンというホルモンは排卵を抑制するため、授乳中は妊娠しづらい状態になります。断乳して生理が再開するとプロラクチンの値が下がりますが、時々高いままの状態の人がいます。プロラクチンの値が高いと妊娠しにくいので治療が必要です」
治療開始のタイミング・検査内容は?
吉田先生は、「二人目がなかなかできないと感じたら、できるだけ早めの受診を」と言います。
「一人目を妊娠してから数年経っていると、その分、卵子は加齢の影響を受けるので、妊娠率は低下し、流産率は高くなります。二人目で初めて不妊治療をスタートする人も少なくありません。気軽に受診してほしいですね」(吉田先生)
二人目不妊治療の大きな壁となるのが、通院の問題。子育てと仕事を両立する毎日のなか、クリニックに通うのは、一人目のとき以上に負担になります。また不妊治療専門クリニックの多くが「子連れNG」なので、ハードルが高くなるケースも。できれば、子どもを連れていけるクリニックを選ぶのがベストですが、子連れOKでなくても、施設内に託児所を備えていれば治療が続けやすくなるはずです。
二人目不妊の治療の流れ・検査内容と、体外受精
二人目不妊でも、治療の流れは一人目の不妊治療と同じ。しかし二人目不妊の場合、タイミング法から人工授精、体外受精へのステップアップに金銭的・心理的ハードルを感じるケースも。木場公園クリニックの二人目不妊外来では、5分の3の人がタイミング法や人工授精といった一般不妊治療、残りが体外受精・顕微受精といった高度生殖医療を用いているそうです。
「一人目不妊も二人目不妊も基本検査は同じですが、年月を経て卵管が詰まってしまうこともあるので、卵管造影検査もやるとベター。第一子のお産で出血が多かったり、帝王切開後の癒着などが起きていたりする可能性もあるので、ホルモン検査、エコー、卵管造影検査と、ひと通り調べておくと安心です。また、パートナーの精子の状態もチェックしておけば不妊になっている原因を見つけやすくなります」(吉田先生)
体外受精を行う場合、複数の卵胞を育てて採卵するために排卵誘発剤で卵巣を刺激します。 「二人目を希望する方には、双子は避けたいと考える人もいます。その場合は弱めに卵巣を刺激して、たくさんの卵胞が育たないように調整することもあります。卵巣過剰刺激症候群になって入院するような事態にならないよう、それぞれの卵巣の状態を見極め、適した卵巣刺激法を選択します」(吉田先生)
自分でできること、まずは性交渉回数を増やす努力を
最後に、二人目不妊を改善するために、パートナー同士で取り組めることをアドバイスします。
● 体力作り
「精子も卵子もいい状態の体があってこそ。良質な食事、適度な運動、十分な睡眠をとりましょう。ホルモンの状態なども改善できます」
● 基礎体温を測る
「基礎体温は測るほうがベター。ただ、お子さんがいると毎日決まった時間に測るのは難しいので、目が覚めたときに測ればOK」
● 排卵日に関係なく性生活を習慣づける
「子どもを持つと性生活が少なくなる人が多数ですが、排卵日とは関係なく、『毎週金曜日はセックスの日』などと決めて習慣づけて。排卵日だけの義務になると、男性がプレッシャーを感じて勃起がうまく行かなくなることもあります。セックスを定期的にすれば、脳が刺激されて質のいい卵子が排卵される確率が高まります」
仕事や育児に追われて忙しい毎日のなか、二人目の妊娠を決意するのは簡単なことではないかもしれません。さまざまな要因で二人目不妊になる可能性はあるので、いずれは二人目を……と思うのであれば、早めに夫と話し合い、準備を進めておきましょう。
木場公園クリニック院長。産婦人科・泌尿器科医。生殖医療専門医・臨床遺伝専門医。医学博士。経営学博士。1999年木場公園クリニック開院。女性不妊症・男性不妊症の両方を診察・治療できる、日本では数少ない生殖専門医。2014年「二人目不妊専用フロア」をオープン。http://kiba-park.jp/
(取材・文 中島夕子=日経DUAL編集部)
[日経DUAL2018年10月2日付けの掲載記事を基に再構成]
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