2019年9月23日(月)

落語 まるで想像の旅 ダイアン吉日さん(もっと関西)
私のかんさい バイリンガル落語家

2018/11/20 11:30
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■「バイリンガル落語家」を名乗るダイアン吉日さんは、日本語や英語で古典から創作落語まで幅広い演目をこなす。最近はクルーズ船などで訪日外国人客を相手に落語を披露することも多い。「言葉の壁さえ越えれば、落語は世界にアピールする力がある」と訴える。

 だいあん・きちじつ 英リバプール出身。1990年に来日し、国内各地をヒッチハイクで旅する。華道、茶道、着付けをこなし、バルーンアーティストとしても活動。落語では98年の初舞台以来、30カ国以上で高座に上がった。

だいあん・きちじつ 英リバプール出身。1990年に来日し、国内各地をヒッチハイクで旅する。華道、茶道、着付けをこなし、バルーンアーティストとしても活動。落語では98年の初舞台以来、30カ国以上で高座に上がった。

幼い頃から外国へのあこがれが強く、バックパッカーとしてこれまでに約60カ国を回った。来日したのはニュージーランドのスキー場でアルバイトしていたときの同僚の話がきっかけ。彼女は大阪に住んだ経験があり「絶対に楽しいよ」と勧められて1990年に大阪に来た。

大阪国際(伊丹)空港から高速道路で大阪の中心部に向かった。緑が少なくコンクリートばかりだと思ったが、暮らし始めてみると人々のノリが良く、フレンドリー。冗談好きで早口で、話が聞き取りにくいところも含めて故郷のリバプールの人々に似ていた。日本の陶芸や着物などに魅了され、もう少しいよう、もう少しいようと思っているうちに気がついたら28年たってしまった。

■落語に出合ったのは96年。英語落語のパイオニアである故・桂枝雀が、舞台で座布団などを整える「お茶子」をする外国人を探していると聞き、好奇心から引き受けた。

テレビで見た落語は理解できなかったが、生で見ると感動した。うどんをおいしそうに食べる姿を扇子一本で表現する。座ったままなのに自由に動いているように見える。どこでも行けて、まるで想像力を使った旅だと思った。どうしてこんなすばらしいものが世界で知られていないのか、信じられなかった。

誘われて英語落語の道場に通い始めた。初めは趣味のつもりだったが、小話を披露するとお客さんがちゃんと笑ってくれて、やる気満々になった。外国人が落語をするのは珍しいのでイベントに呼ばれるようになり、英語落語の米国ツアーにも参加するなど仕事がどんどん増えていった。

最近は訪日観光客を乗せたクルーズ船で、数百人の観客の前で落語をする機会が増えた。全く落語を知らなかった人も楽しんでくれ「船内のエンターテインメントで一番面白かった」などと言ってもらえる。文化の違いのため理解しづらいネタもあるので、日本の食べ物とか入浴の習慣とか、まずヒントを説明するのがコツ。外国人が日本文化を知る機会にもなっているようだ。

■大阪はここ数年で訪日観光客が急増。外国人にとって住みやすい街になったかと思いきや、違和感を覚えることが増えたという。

2000年ごろ、来日した母(右)らと。母はいつも娘の決断を応援してくれる

2000年ごろ、来日した母(右)らと。母はいつも娘の決断を応援してくれる

長年住んでいる人も観光客も「外国人」とひとくくりにされる傾向が強まったと感じる。例えばドラッグストアで「よく効いて、眠くならない風邪薬はありませんか」とこちらは日本語で尋ねているのに「This one is very cheap.」(これはとても安いです)と店員さんが英語で教えてくれた(笑)。中国語の通訳さんを連れてこられて、お互い戸惑ったこともあった。

一方で「ありがとう」と言っただけで「日本語が上手ですね」と褒められることもある。親切心で言ってくれているのは分かるが、本当はそう思っていないはず(笑)。「外国人は日本語ができない」「日本のことを知らない」という先入観が強まった気がする。

まずこちらの言うことをしっかり聞いてほしい。そして、おかしいこと、間違ったことがあれば率直に指摘してほしい。そうすれば直すことができるから。いつまでもよそ者扱い、お客さん扱いでは寂しい。

落語のマクラで、来日直後の失敗談をすることが多い。「座ってください」と言いたいのに「触ってください」と言ってしまったとか。自分が苦労したこと、失敗したことを落語の中で伝えることで、外国人が日本でどう感じているのか、笑いながら分かってもらえたらうれしい。

(聞き手は大阪社会部 覧具雄人)

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