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マハティール政権、国連条約の批准難航 民族融和の象徴

【香港=中野貴司】マレーシアのマハティール政権がめざしてきた国連の人種差別撤廃条約の批准が難しくなっている。同条約の批准は新政権の多民族融和政策の象徴となるはずだったが、マレー系優遇の維持を訴える野党だけでなく与党内からも異論が出て行き詰まりつつある。華人政党も加わる与党連合にとって民族問題はアキレスけんになりかねず、マハティール首相は難しいかじ取りを迫られる。

マハティール氏は18日、国連条約の批准にはマレー人の特別な地位を保証した憲法の改正が必要になるとの認識を示したうえで「与党議員が造反する可能性があるなか、(憲法改正に必要な)3分の2の確保はほぼ不可能だ」と地元メディアに語った。

マレーシアは1957年の独立以来、政権を保持してきた与党連合・国民戦線下で、国連の人種差別撤廃条約を批准してこなかった。多数派のマレー系住民を優遇する「ブミプトラ(土地の子)政策」が、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策の採用を求める国連条約と相いれなかったためだ。マハティール氏自身も国民戦線下で最初の政権を担った81年から03年にかけて、ブミプトラ政策を推進した。

ただ、マハティール氏が率いる希望連盟は5月の総選挙で政権を奪取するため、多民族の融和を維持する政策を導入すると政権公約で約束した。マハティール氏は9月の国連総会の演説でも、「人権保護に関連した国連の主要な条約を全て批准することを約束する」と表明していた。

ところが、政府がその後、実際に人種差別撤廃条約の批准を進める方針を発表すると、反対論が噴出。現地報道によると、有力野党の統一マレー国民組織(UMNO)や全マレーシア・イスラム党(PAS)からだけでなく、与党の幹部からも懸念する声が出た。こうした懸念を踏まえ、マハティール氏は18日、早期の条約批准は難しいとの認識を表明した。

マハティール政権はこれまで主要閣僚の財務相に華人のリム・グアンエン氏を起用するなど、出身民族にとらわれない実力主義の人事を打ち出してきた。ただ、マハティール氏自身は今もブミプトラ政策に一定の意義を認めているとされる。

今後、旧政権と同様にマレー系優遇に回帰していけば、華人系やインド系国民からの支持を失うリスクがある。一方で、国民の7割弱を占めるマレー系の支持基盤も重視せざるをえず、新政権は多民族国家特有の民族融和という難題に直面している。

国連の人種差別撤廃条約は65年の国連総会で採択され、69年に発効した。締約国は約180カ国にのぼり、大半の先進国・途上国が批准・加入している。

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