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落日GE、もろ刃の効率経営(一目均衡)

編集委員 藤田和明

カナダの公的年金PSPインベストメンツは、昨年末に445万株保有していた米ゼネラル・エレクトリック(GE)株を9月末までに3分の1に絞った。米国内の開示によると日本の光通信も10万株持っていたGE株を6月末で全て手放した。「専門部署による純投資の判断」(光通信)との説明だが、米国の超優良銘柄が並ぶ同社の保有リストからGEが消えた。

業績不振と株安に直面するGE。2017年初めに30ドル前後だった株価は前週末には8ドル台に下落。7~9月期決算でM&A(合併・買収)に絡んだのれんで巨額の減損を計上し228億ドル(約2.5兆円)の最終赤字になった。

経営トップを1年で更迭し再建を目指すが「20年には8ある事業のうち6つは利益を生めないだろう」(JPモルガンのトゥサ氏)。苦境が続くとの見方は消えない。

日本企業が経営の優等生と憧れたGEの落日。「事業構成を長期型に組み替えるM&Aを進めたが、高いリスクに見合う自己資本を備えていなかった」と若林秀樹・東京理科大学教授は話す。

GEは金融危機で重荷となったGEキャピタルを縮小する一方、仏アルストムのエネルギー事業を買収するなど製造業回帰を探った。選択と集中へM&Aを重ねた結果、のれんが積み上がっていく。

QUICK・ファクトセットによれば昨年末ののれんは839億ドル。自己資本の1.3倍に膨らんでいた。今回の減損により自己資本比率は10%に落ち、さらなる事業の切り売りを迫られている。

減損の理由は「高収益のサービス、長期の顧客関係、ガスタービン技術」の価値の見直しだ。石炭火力への逆風など誤算も重なった。電力のような10年、20年単位の事業はリスクを見積もる前提次第で価値が揺れる。突然の巨額損失は東芝でも見た風景だ。

自己資本を厚くしておく手がなかったわけではなく、金融事業の縮小過程で資金を得ていた。しかし優先したのは自社株買いと配当だ。物言う株主からの圧力もあり、自己資本利益率(ROE)を下げない狙いもあっただろう。

その間の設備投資は抑えられたまま。工場自動化のデジタル戦略などでは独シーメンスに先行を許した。「魅力的な業績達成と多額の配当を同時に追求しようとして無理をしていた」(米アライアンス・バーンスタイン)

鈴木健嗣・一橋大学准教授によると「ROE志向は経営の足かせになる可能性がある」。高効率経営にみせるあまり財務リスクを高め長期に価値を生むための先行投資を怠れば、本来の競争力を落としてしまう。もろ刃の剣だ。

米投資家ウォーレン・バフェット氏はかつて「潮が引いたとき初めて誰が裸で泳いでいたかわかる」と語った。過剰流動性が支えた好景気に転機がきているなら、GEの苦境は警鐘の1つだろうか。

問いは日本も同じだ。効率化と同時に、将来に価値を生み出す手をしっかりと打っているか。その差が数年先の実力となって表れるはずだ。

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