2019年7月24日(水)

APEC、機能不全に 米中の溝埋まらず

習政権
2018/11/18 19:30
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【ポートモレスビー=遠藤淳、永井央紀】パプアニューギニアで開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が首脳宣言の採択断念に追い込まれた。米国と中国の通商政策を巡る非難合戦が激化し、首脳レベル間の協議でも歩み寄れなかった。二大国の対立は地域の経済協力の枠組みに影を落とし始めた。

「1つ、2つの項目で合意できなかった。代わりに議長声明を出す」。議長国パプアのオニール首相は首脳会議閉幕後、こう述べた。会見で首脳宣言断念について説明をしなかったことから、数十人の記者にもみくちゃにされる一幕もあった。

米中の対立は15日に開かれた閣僚会議から浮き彫りになっていた。米国は公正で互恵的な貿易の必要性を強調し、貿易慣行が不公正な国があるとして、暗に中国を批判。中国は「米国第一主義」を掲げる米国を念頭に「一国主義」を非難した。

首脳宣言は実務レベルで作成作業が進められていたが、日本経済新聞が入手した15日夜時点の案では既に埋めがたい溝ができていた。米国は「多角的貿易体制」の項目を世界貿易機関(WTO)の改革に関する項目に変えるよう要求、「貿易をゆがめる全ての慣行の撤廃を求める」と盛り込むよう主張した。中国は「一国主義と対抗する」との表現を求めた。

宣言を巡る対立は過熱。中国代表団4人が文言修正を求めてパプアのパト外務・貿易相に面会を要求、執務室に押し入ろうとしたと18日に報道された。中国側は「事実ではない」と述べ、強引に押し入ったのではないとの認識を示している。

18日午前、パプアは「多角的貿易体制」の項目を削除するなど米国案を丸のみした議長案を各国に提示し、了承するよう求めた。「首脳会議の閉幕直前になっても一歩も譲らない米国にパプアが折れた」(外交筋)という。だが、強引な進行に中国だけでなく、複数の国・地域が反発し、断念するしかなかった。

米中はAPEC首脳会議に向けた一連の国際会議で対立を深めてきた。15日にシンガポールで開いた東アジア首脳会議では、中国の李克強(リー・クォーチャン)首相が南シナ海問題で米国の介入をけん制すると、ペンス米副大統領は「中国の南シナ海における軍事拠点化や領域拡大は違法で危険だ」と糾弾した。

舞台はAPECに移る。習近平(シー・ジンピン)国家主席が17日の演説で「保護主義や一国主義に反対する」と唱えると、直後に登壇したペンス氏は中国の不公正貿易や広域経済圏構想「一帯一路」を皮肉を込めながら厳しく批判した。

ペンス氏は18日、記者団にAPEC期間中に習氏と2回接触したと明らかにした。「米国は(中国との)よりよい関係に関心があるが(中国側の)変化がなければいけない」と語りかけたところ、習氏は「対話が大事だと思っている」と答えたという。

米中対立は11月末にも予定されるトランプ米大統領と習氏の「直接対決」に向かう。ペンス氏は帰国の途につく際、記者団に米中の問題は「貿易慣行から始まり関税、輸入枠、技術の強制移転、知的財産権の侵害、航行の自由や人権まで広がっている。これらは首脳会談で議題になるだろう」と見通しを語った。

中国は強硬派のペンス氏との交渉よりも、ディール(取引)を重視するトランプ氏との直談判を重視しているもようだ。5月の閣僚級通商協議でまとめた案がトランプ氏にひっくり返された経験から、直接交渉するしかないとの判断に傾いている。

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