台湾統一地方選、与党が苦戦 地盤・高雄で野党旋風

2018/11/18 18:00
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【台北=伊原健作】24日に投開票が迫る台湾の統一地方選挙で、蔡英文総統が率いる与党・民主進歩党(民進党)が苦戦している。有力地盤である南部の高雄市で、最大野党・国民党の市長候補が支持率で与党候補を逆転する異例の事態が生じている。勢いは台湾全体にも波及しており、2020年の総統選の前哨戦となる今回選挙で敗北すれば、蔡氏の総統再選に黄信号がともる。

野党・国民党の高雄市長候補、韓国瑜氏の人気は社会現象に(11日、台湾南部の高雄市内)

野党・国民党の高雄市長候補、韓国瑜氏の人気は社会現象に(11日、台湾南部の高雄市内)

統一地方選は全22県市の首長や議員らを選ぶ4年に1度の大型選挙。与野党とも不人気で勢力図は変わらないとの下馬評だったが、選挙戦終盤で覆った。シンクタンク「台湾民意基金会」が13日に発表した政党支持率の調査では、国民党が民進党に一気に12ポイント近い差を付けた。異変を起こしたのが国民党の高雄市長候補、韓国瑜氏(61)だ。

17日夜、高雄市内での韓氏の集会は支持者が振る赤い旗で染まり、異様な熱狂に包まれた。「貧困の日々は終わり。台湾一の金持ちにするぞ」。韓氏が叫ぶと「そうだ!」との反応が地鳴りのように広がった。

与党・民進党の高雄市長候補、陳其邁氏は巻き返しを急ぐ(17日、南部の高雄市内)

与党・民進党の高雄市長候補、陳其邁氏は巻き返しを急ぐ(17日、南部の高雄市内)

「ディズニーランドを誘致する」「人口を500万人(高雄市は現在277万人)に増やす」。実現が疑わしい主張が多いにもかかわらず、10月ごろから人気が急騰。民放TVBSの11月上旬の世論調査では民進党新人候補の陳其邁氏(53)を支持率で10ポイント上回った。台湾メディアは「韓流」と呼び社会現象として集中的に報道している。

高雄は20年にわたり民進党が執政を握る牙城。北部出身の落下傘候補である韓氏は当初泡沫(ほうまつ)と見なされた。だが「高雄は老いて貧しくなった」と現状を否定し変化を叫ぶ姿が不満を持つ層の共感を広げる。

対する陳氏は「高雄を信じよう」と民進党の実績を強調し地に足がついた経済対策を訴える。ただ立法委員(国会議員)を務めた父親を持つ民進党のエリートであり、韓氏が反骨で挑む構図を際立たせた面がある。

ネット上では「韓粉」と呼ばれる熱烈な支持層が出現し、韓氏を批判する人物のSNSに数十万~100万件超の批判コメントが殺到する例が相次ぐ。民進党は「中国がネットを通じ選挙介入している」と懸念を表明するが勢いは止まらない。

地元の鉄工所で働く林佳蓉さん(35)は韓氏に「不可能を可能にしようと立ち向かう姿に希望を感じる」という。友人が台北など発展した北部に移住したと嘆き、「現状を変える期待を持てる人に投票したい」と話す。

不満や失望を取り込む韓氏は「この選挙は民進党への不信任投票だ」と主張して政権与党を揺さぶる。蔡政権は労働条件の改善や年金改革を進めたが、既得権層の反発で妥協を迫られ、若者ら支持層の失望を招いた。対外的にも中国の圧力で5カ国との外交関係を失うなど展望が見えず、選挙戦で防戦に回っている。

「私は韓国瑜。この優秀な候補を落としてはいけない」。台北など各地の路上では国民党の選挙カーが韓氏の応援演説を流す。選挙ポスターは各地の候補者と韓氏が並ぶ構図に差し替わった。国民党への批判につながる親中路線は、地方選を理由に表に出さず、韓氏個人を前面に立て民進党への批判票を取り込む戦略が奏功しつつある。

蔡英文総統が主席を務める与党・民進党は苦戦している(14日、台湾中部の台中市)=民進党提供

蔡英文総統が主席を務める与党・民進党は苦戦している(14日、台湾中部の台中市)=民進党提供

民進党は中部の台中など複数の県市で劣勢と報じられている。特に地盤の高雄で敗北すれば蔡氏の責任問題となり、総統と兼ねる党主席の辞任を迫られる可能性がある。

14年の前回選挙では「対中傾斜」との批判を浴びた国民党が大敗し、22県市のうち首長ポストは15から6に激減。馬英九・前総統が国民党主席を引責辞任した。党勢を立て直せないまま16年の総統選でも敗れ、民進党に政権交代を許した。

民進党は今回、高雄を決戦の地と位置づける。失えば20年の総統選で政権を維持するシナリオが揺らぐ。同党関係者は「予想外の事態」と危機感をにじませ、「投票までまだ1週間あり、巻き返しは可能」と強調した。

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