ABB、日立などと電力設備事業の売却交渉
【ウォルフスブルク=深尾幸生】産業用電機世界大手のABB(スイス)が電力設備事業を売却する方向で調整に入ったことが16日分かった。電力の変圧器や送配電設備、制御システムを世界中で手がける。売却額は1兆円規模になるとみられ、売却先の候補として日立製作所や中国大手などが浮上している。
ABBは取材に対し、「コメントできない」と述べた。ABBの「パワーグリッド」事業は、2017年の売上高が約100億ドル(約1兆1300億円)で全社の約3割を占めた。北米や欧州のほか、インドや中国などで大型の発電所やプラントなどに送配電、電力制御機器などを販売している。
電力グリッド部門の全部または一部の売却のほか、事業部門を切り出して上場させるプランなどを検討しているとみられる。ロイター通信は日立のほか、三菱電機や中国の国有送電会社、中国国家電網(SGCC)とも交渉していると報じた。
日立は「事実関係を確認できず、コメントを差し控える」、三菱電機は「当社に話は来ていない」としている。
ABBの電力グリッド部門はロボット関連部門など他の主力部門と比べ利益率が低く、ABBはエネルギー関連のEPC(設計・調達・建設)事業を縮小するなど、同部門の今後の方向性を検討していた。
10月の決算電話会見で売却の可能性について問われた際、ウルリッヒ・シュピースホーファー最高経営責任者(CEO)は「ふさわしい時期に話す」とコメントしていた。
日本では日立や三菱電が同分野の事業を手がけている。日立は15年にABBと合弁会社を作り、高圧の送電設備事業を手がけている。