2018年12月13日(木)

道頓堀へ 巨像続々 ポップ工芸の立体看板(もっと関西)
ここに技あり

もっと関西
コラム(地域)
関西
2018/11/19 11:30
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大阪・道頓堀にひしめく飲食店や物販店の立体看板。目立ってなんぼの大阪人の心意気をコテコテに体現し、国内外の観光客を関西に引き寄せるのに一役買う。こうした立体看板を数多く制作するのが大阪府八尾市の専門メーカー、ポップ工芸だ。

発泡スチロールをカッターやヤスリで削り、原形を造っていく

発泡スチロールをカッターやヤスリで削り、原形を造っていく

外環状線に面した工場を訪ねると、見上げるような大きさの発泡スチロールの塊が鎮座していた。大型冷蔵庫2つ分ほどもあるだろうか。

まずは熱したニクロム線で塊のあちこちを切り取る。おおまかな形ができたら、ナイフや包丁で細かい部分を切り出し、形を整えていく。最後はサンドペーパーで表面を磨き上げ、立体看板の原形が完成する。

巨大な塊にしがみつき、切りつけ、こすり続けるさまは格闘を思わせる。「やり直しができません。何度やっても緊張しますよ」。同社で「造形師」を称する守屋徹志さんが言う。

出来上がったのは、見えを切る歌舞伎役者の上半身。高さ1.2メートルほど。隣では大きな顔がこちらをにらむ。文楽人形の首の一つ「文七」をイメージした。この後、原形の表面を樹脂でコーティングし、塗装すれば完成だ。

歌舞伎役者と文七は2つ合わせ、道頓堀に来春開設するミュージアム施設の外壁を飾る。にぎやかな道頓堀にまた新顔が加わる。

同社が立体看板の制作を始めたのは二十数年前のこと。それまで通常の看板を作っていたが道頓堀のラーメン店から「とにかく目立つ看板を」と依頼された。「最初は試行錯誤でした」と守屋さん。発泡スチロールを幾つも切断し、削りすぎては失敗した。同社の立体看板の第1号、金龍ラーメンの竜はこうして出来上がった。

立体看板はポップ工芸自体の広告塔でもある。作れば作るほど引き合いが増えた。やはり多くは道頓堀から。全長5メートルの大阪王将のギョーザ2人前や、マグロの赤身を握る元禄寿司の巨大な右手なども同社が制作した。

他に、企業や自治体からの発注も多い。奈良県のマスコットせんとくんは「大小400体以上作りました。あちこちで見かけるせんとくんはほぼすべて当社の作品です」(守屋さん)。

同社は社員10人に満たない小所帯。年間30~50件ほどの受注をこなす。せんとくんのような例外もあるが、ほぼすべてが一点ものの作品だ。納入すれば格闘相手ともお別れだが「忘れた頃に街角でひょっこり"再会"することもあります。うれしいような励まされているような不思議な気分です」。そう話す守屋さんの顔が誇らしげだ。

文 大阪・文化担当田村広済

写真 目良友樹

 カメラマンひとこと
 豪快かつリアルな歌舞伎役者に圧倒された。職人が手を動かすごとに肌や服の質感が生まれ、巨大な塊に命が吹き込まれていくようだ。迫力ある造形を強調しようとローアングルで撮ることに。作業ででた切りクズで雪面のようになった床に膝をつき、見えを切る姿に夢中でシャッターを切る。気づけば紺色のズボンは真っ白になっていた。

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