2019年1月23日(水)

節水日本一、意外にも福岡市のワケ(探検!九州・沖縄)
謎解きアカデミー

コラム(地域)
九州・沖縄
2018/11/18 6:00
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政令市の中で、1人当たり水使用量が最も少ない都市をご存じだろうか。降水量の少ない瀬戸内地方をイメージするが、実はなんと福岡市。福岡市の節水技術は世界トップクラスを誇り、一定規模の建物には下水をきれいにした再生水の利用を義務付け。海外への技術支援にも生かされている。「節水型都市・福岡」のルーツを探った。

1978年の大渇水時、バケツに給水を受ける市民(福岡市水道局提供)

1978年の大渇水時、バケツに給水を受ける市民(福岡市水道局提供)

「あの時は嫌だったなあ」。福岡市水道局経営企画課長の城後勝浩さん(57)は高校2年生だった当時を振り返る。給水制限で水が出ない時間帯があり、大きなバケツで風呂の水をトイレに運びタンクに水を流し込む作業を繰り返した。「給水時間でも水が出ない家があった。それに比べれば我が家はマシでした」

40年前の1978年、福岡市は記録的な渇水に見舞われた。77年7月~78年5月の降水量が平年の6割以下となり、ダムの貯水量は減少。20日から給水制限が始まった。

1978年の水不足で干上がる南畑ダム(福岡市水道局提供)

1978年の水不足で干上がる南畑ダム(福岡市水道局提供)

6月1日からの10日間の最も厳しい時期は、1日の給水時間がわずか5時間。市民は給水車からバケツに水を受け取り家に運び、市内の学校のほとんどでプールの授業は中止になった。制限は79年3月24日まで、実に287日間に及んだ。

「水は大切な資源だということを身をもって経験した。『もったいない』という意識が根付いた」と城後さん。市は94年にも渇水を経験し、給水制限は78年を上回る295日間続いた。水源開発などが進み、1日の給水制限時間は短く済んだ。

2度の大渇水を経験した市民の意識は高い。市の2014年度調査では「節水を心がけている人の割合」は89.9%と全国平均80.5%(内閣府調査)を1割近く上回る。家事用1日1人当たりの水使用量は平均199リットルと、政令市で最少だ。

大渇水の背景には、大きな川がなく水資源に恵まれない事情がある。市は1回目の大渇水後、ダム開発や筑後川からの受水事業を進めつつ、「節水型都市づくり」を推進。03年には全国初となる「節水推進条例」を施行し、共同住宅を除く一定規模の建物に再生水の利用を義務付けた。

市の水管理センターでは24時間態勢で浄水場から蛇口までの水の流れや水圧を監視。水圧が高まると漏水が多くなるといい、常に適切な水圧になるよう管理している。

浄水場で作られた水のうち、配水管などから漏れて家庭までに届かない水の割合「漏水率」は17年度で1.8%。パリ8%、ローマ26%(いずれも12年)を大きく下回り、世界トップクラスだ。

フィジーから技術者を受け入れ、漏水技術の研修を行った(10月22日、西区の市水道技術研修所)

フィジーから技術者を受け入れ、漏水技術の研修を行った(10月22日、西区の市水道技術研修所)

高い技術は海外支援にも生きる。87年にマレーシアへ技術者を派遣したのを皮切りに、インドネシアなど14カ国へ延べ140人超を送り出した。

今秋はフィジーから技術者6人を受け入れ研修を実施。ポニパテ・ナイグレブさん(37)は「福岡市の取り組みは非常に進んでいる。フィジーにも取り入れれば漏水率を下げていける」と話す。

課題もある。市水道局の15年度末の企業債残高は1293億円と、料金収入の4.2倍。他の大都市の平均(2倍)を大きく上回る。水道料金も政令市の中で5番目に高い(17年度)。

大渇水を知らない若者も増えた。「節水を心がけている人の割合」は15年度調査で70代以上が95%に対し、30代は80%、20代は71%にとどまる。

市は13年度から、小学4年生に水道の仕組みや渇水の歴史などを教える90分の出前講座を始めた。市水道局総務課の江崎智美課長は「子供が家に帰って話すことで、家庭全体の意識も高まってほしい」と期待している。(西部支社 朝比奈宏)

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