攻める新興勢、守るソニー テレビ商戦の価格二極化

2018/11/15 16:54
保存
共有
印刷
その他

国内市場のテレビの価格が二極化している。普及が進む4Kを巡り、アイリスオーヤマや中国のハイセンスといった異業種や海外勢が低価格攻勢をかける一方、ソニーなど電機大手は大画面、高価格の商品を中心に据える。4Kテレビの平均単価は2年で2割下がり、テレビのコモディティー化は止まらない。大手は存在感が高まる新興勢力への対応を迫られている。

4Kテレビは低価格商品が増えている(東京・千代田のビックカメラ有楽町店)

■低価格4K、ドンキが口火

「あまりにも安くなっているので驚いた。消費税率も上がるので、10万円以下であれば買ってもよいかもしれない」。14日、ビックカメラ有楽町店(東京・千代田)を訪れた東京都内の女性(50)は店頭に並んだ商品の価格をみて、驚きを隠さなかった。

売り場には200万円を超える77型の有機ELテレビがある一方、5万円程度の50型の4Kテレビも並ぶ。テレビ売り場担当の横田裕明さん(28)は「品ぞろえが増え、個別のニーズに応じて選びやすくなった。今年の年末商戦は期待できる」と話す。

国内では12月1日に4K・8Kの放送が始まる。世界に先駆けた本放送となる8Kに注目が集まるが、テレビ商戦の本命は4Kだ。

電子情報技術産業協会(JEITA)によると、薄型テレビ出荷全体に占める4K比率は、数量ベースで4割程度まで拡大。価格ベースでは約7割に達する。動画配信大手などによるコンテンツの拡充と並んで市場の拡大を後押ししたのは、低価格商品の充実だ。

17年6月にディスカウントストアのドン・キホーテが50型で税別5万4800円の4Kテレビを投入。17年末に家電量販店のノジマ、中古販売店運営のゲオホールディングスも続き、1インチ1000円を切るような「格安4K」市場が立ち上がった。

ヤマダ電機船井電機と独占販売契約を結び、高画質で低価格の機種を販売している。市場シェアで「20年に20%」(ヤマダ電機の山田昇会長)という目標を掲げる。月内にはアイリスオーヤマが参入し、49型で税別10万円以下のモデルを発売する。

新興勢の台頭で4Kテレビの価格は下がった。調査会社のBCN(東京・千代田)によると、40型台の平均単価は16年に12万9000円。それが直近では10万円まで下がった。50型台でも2割程度下がっており、下落傾向は続く。

■プレーヤー増加、消耗戦に

異業種の台頭に加え、海外勢も存在感を示し始めた。日本ではシャープパナソニック、ソニー、東芝が長く高いシェアを握ってきた。そこに割って入ろうとするのが、3月に東芝からテレビ事業を買収した世界4位のハイセンスだ。

低価格攻勢を続けるハイセンスの国内販売台数シェアは年々高まり、足元で7%程度で5位とみられる。12月には旧東芝系の技術を活用して開発した映像処理エンジンを採用した商品を投入。低価格に加え、有機ELテレビなど高価格帯商品も19年に発売する。「19年にシェアを10%に高める」(日本法人の磯辺浩孝副社長)のが目標だ。

「普及価格帯の商品は競合ではない」。日本経済新聞などの取材に応じたソニーの高木一郎専務は15日、こう強調した。一時は4000万台を目指した世界販売は1150万台程度まで減ったが、生産体制の見直しなど構造改革を進め、利益は安定してきた。19年3月期は前期比で100万台近く販売台数を減らすが、オーディオ機器も含めた営業利益で800億円超を見込む。

金額ベースで世界シェア10%を目安とし、規模を追わない戦略で高付加価値商品に経営資源を集中する。高めてきた画質に加え、音質も高めて高価格帯で勝負する構え。

世界に先駆けて8Kを投入してきたシャープは、本放送開始に合わせて8Kチューナー内蔵のテレビも用意した。世界では韓国サムスン電子やLG電子なども参入を表明。競争激化が見込まれる中、商品拡充で先行者の利点を生かす。

テレビ市場は20年の東京五輪などで短期的な需要増は見込めても、長期的な成長は想定しづらい。プレーヤーの増加は消耗戦を招く。テレビの自社製造から12年に撤退した日立製作所は9月、国内系列販売店で自社商品の供給をやめ、ソニー製への切り替えを決めた。低価格品が増えれば、消費者が高価格帯の商品を見る目線はさらに厳しくなる。一方、低価格商品も高画質が売り物の4Kにもかかわらず満足させる映像を実現できなければ消費者は離れる。両者の実力が問われる年末商戦になりそうだ。

(岩戸寿、矢尾隆行)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]