M&Aされて成長狙う 20代起業家の新戦略

2018/11/15 15:41
保存
共有
印刷
その他

M&A(合併・買収)されることで成長を狙う――。20代の若手起業家が戦略的に自社株の一部を事業会社に売却する動きが相次いでいる。豊富な資金や人材を抱える事業会社との連携を進めつつ、起業家は一定比率の株保有を続け、経営を担う。若年層のスタートアップが活発になる中で、成長を意識したM&Aは今後も増えそうだ。

ラップスの和田崎達也社長(右)は2歳上の花房弘也社長が率いるアラン・プロダクツの傘下に入った

資本業務提携を結んだ終活ねっとの岩崎翔太社長(右)とDMM.comの緒方悠執行役員

占いに関するネットサービスを運営するラップス(東京・渋谷)は10月末、髪や性に関する情報メディアを運営するアラン・プロダクツ(東京・港)に発行済み株式の過半数を譲渡し、同社の子会社になった。買収額は数億円とみられる。

ラップスの和田崎達也社長は現在24歳で、2017年1月に同社を起業。同年10月にサービスを開始し、恋愛や結婚の相談をする女性の利用者を増やしている。創業後に複数のエンジェル投資家から1億円弱を調達。さらに事業を伸ばすための調達手段を模索していた矢先、アランの花房弘也社長(26)から買収提案を受けた。

「M&Aで会社を売ってやめることは考えていなかった」と和田崎氏は言う。アランの親会社のユナイテッドは18年6月、メルカリの新規株式公開(IPO)で多額の資金を得ていたこともあり、「これから新規事業をつくっていくうえで、ファイナンス面でより迅速に展開していける」と判断。花房氏とは以前から知り合いで「信頼関係があったことも大きかった」という。

アランが既存株主のエンジェル投資家から株式を買い取る一方で、和田崎氏ら創業メンバーは引き続き主要な株主として残る。「将来、成果が出たら2~2.5倍の値段で残りの株式を買い取る契約を結んでいる」(花房氏)という。

葬儀やお墓など終活に関する情報サイトを運営する終活ねっと(東京・渋谷)は10月末、大手ネット企業のDMM.com(東京・港)と資本業務提携した。ベンチャーキャピタル(VC)などが保有していた終活ねっと株の51%をDMMが取得(金額は非公表)。残りの49%の株は終活ねっとの岩崎翔太社長(23)ら経営陣が持ち続ける。

「個人の利用者は順調に増えていたが、資金や人材が足りず、法人顧客の開拓に手が回っていなかった」。岩崎社長は自社の現状をこう分析している。終活ねっとは16年9月の設立で、東京大学の現役学生である岩崎氏を始め、60人の従業員の95%が学生。企業向けビジネスの経験が不足していたという。

一方、DMMは18年10月、25歳以下の若手起業家に1~5%を出資するプロジェクトを立ち上げている。今回のM&Aを担当した市村昭宏経営企画室室長は「我々にない感性を持っている若さが魅力。10年後を見据えて次のマネジメント人材を育てていきたい」と狙いを語る。

もっとも、M&Aにはリスクもある。DMMは17年10月、中古品即時買い取りアプリ「CASH」を運営するバンク(東京・渋谷)の全株を70億円で取得したが、最近になって5億円で売却したことが判明した。今回のラップスや終活ねっとは経営陣が引き続き株を持つ形としており、スキームも異なるが、相対交渉で決まることが多いスタートアップのM&Aは価格算定が難しい。買い手側が起業家の意欲を引き出す仕組みの整備も課題になりそうだ。

(鈴木健二朗)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]