大阪市 温泉なぜ増加?(もっと関西)
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2018/11/15 11:30
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1000メートル掘れば どこでも湧く

大阪市内で温泉施設が増えている。源泉数は50近くに上り、街を歩けばスーパー銭湯やホテルなど天然温泉を売りものにする施設がよく目に付くようになった。関西は兵庫の有馬や和歌山の白浜などの温泉地が全国的に有名だが、大阪での温泉の増加にはどんな事情があるのだろうか。

大阪市港区のベイエリアに来年2月、関西最大級の温泉テーマパーク「空庭温泉 OSAKA BAY TOWER」が開業すると聞き、運営会社を訪ねた。アートホテル大阪ベイタワー近くの延べ床面積1万6000平方メートルの建物に、源泉かけ流しの露天風呂などを用意。地下1千メートルから温泉をひく。大阪が栄えた安土桃山時代をイメージした。「年60万人の来園が目標で、2割は外国人を見込む」と、大阪ベイタワー合同会社の道古康博さんは胸を張る。

有馬や白浜が古代から名湯の地とされたのに対し、大阪市内で初めて本格的な温泉が出たのは1988年と歴史は浅い。掘削技術の発達で地下深くの源泉に容易に到達できるようになり、90年代からのスーパー銭湯に代表される都市型温泉ブームが拍車を掛けた。

大阪市内の源泉数は2017年時点で47。大阪府下だと1998年度から2016年度に105から172に増えた。同時期に107から136となった京都府を逆転した。今や大阪は立派な"温泉府"だ。

関西国際空港近くのりんくうタウン(大阪府泉佐野市)でも掘削が進む。工事にあたる山西サク井設備(同東大阪市)の三好聡常務執行役員は「インバウンドで温泉が人気。引き合いは強い」と話す。

地質やプレートに秘密

地質上の特徴も背景にある。温泉掘り約30年のベテラン、奥ボーリング工業(兵庫県尼崎市)の武田充弘工事管理部長は「大阪平野なら、どこを掘っても温泉が出る」と言い切る。大阪平野は基盤岩がせり上がる上町台地の地下を除き「大阪層群」という軟らかい地層が地表から深さ約1500メートルほどを占める。このため硬い岩盤までの距離が深い。

温泉の定義とはラドンなど特定の物質を一定以上含むか、採取時の温度が25度以上であること。深く掘るほど、地熱で地下水は温かくなる。「1千メートルも掘れば、その地下水は温泉の定義にまずあてはまる」(武田さん)という。

温度の上昇率は「地温勾配」と呼ばれる。大阪市立大理学研究科の益田晴恵教授は「大阪は地温勾配が特に高い」と解説する。一般的に100メートル掘ると温度は約3度上がるところ、大阪では約3.6度上昇するという。単純計算で700メートルも掘れば温泉にあたりそうだ。益田教授は背景として地球を覆うプレート(岩板)の動きとの関連を指摘する。西日本では日本列島の下にフィリピン海プレートが沈み込む。この作用で、ちょうど大阪の地下に熱が発生すると推測される。

大阪の温泉は物質含有量が少ない単純温泉が多いが、塩分濃度の高い場所もある。保温効果が高まるとされ、寒い季節に特にうれしい。益田教授によると、その起源は海水にある。太古、大阪の大部分が海で、6千年ほど前には生駒山麓まで海が迫っていた。こうした海水が地下深くにとじ込められているという。

特に塩分濃度が高いとされる「松原天然温泉You,ゆ~」(大阪府松原市)につかり、湯をなめてみた。確かに海水のような苦みと辛さを感じる。温浴効果は高そうだ。しかし、温泉がこんこんと湧く様を眺めていると、枯れることはないのか心配も湧いてきた。

大阪の地下構造に詳しい地域地盤環境研究所の伊藤浩子主任研究員は「地下水をためるキャパシティーは高い」という。大阪の多くの源泉が位置する深さ800~1500メートルの地下は、水を蓄えやすい砂れき層にあたるという。一方で「雨水などがそこまで浸透するには膨大な時間がかかる。利用は適量にとどめるべきだ」と念を押す。

大阪府では08年度から、既存源泉から800メートル以内に温泉井戸を掘削できないなどの規制を設けた。これにより、特に都市部では温泉開発の余地は狭まっているようだ。ただ、源泉には未利用や利用を終えたものもある。伊藤主任研究員は「使われていない源泉の廃止を促すなどの仕組みを整えるべきだ」と指摘する。

(大阪・文化担当 西原幹喜)

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