2019年9月23日(月)

海の中にデータセンター、マイクロソフトが新技術

2018/11/14 11:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

米マイクロソフトが海中にデータセンターを設置する取り組みを進めている。コンピューターは水に弱いというイメージがあるが、年間を通じて温度変化が少なく災害のリスクも低い海中はサーバーの設置場所として実はうってつけなのだという。専用タンクの耐久性などの検証を重ねた上で、実用化のタイミングを決定する方針だ。

英オークニー諸島の沖合に設置されたマイクロソフトの海中データセンター(Red Box Pictures)

英オークニー諸島の沖合に設置されたマイクロソフトの海中データセンター(Red Box Pictures)

英スコットランド北部、オークニー諸島の沖合1キロメートル。水深36メートルの海底に今年6月、輸送用コンテナほどの大きさの円筒形のタンクが設置された。マイクロソフトが「ナティック」と呼ぶ海中データセンターの研究開発プロジェクトの一環だ。

長さ12.2メートル、直径2.8メートルの円筒形のタンクの中には計864台のサーバーと記憶容量27.6ペタ(ペタは1000兆)バイト分のハードディスクが搭載された。処理能力は高性能パソコン数千台分、記憶容量は映画500万本分に相当するという。

タンク内は地表と同じ気圧で、窒素を充填させたほかは特殊な装置は使っていないという。240キロワットの消費電力は周辺の風力や太陽光など再生可能エネルギーで賄い、データセンターの運用に伴う二酸化炭素(CO2)を排出しない「ゼロエミッション」を掲げている。

プロジェクトを担当するマイクロソフトのスペンサー・フォワーズ氏は海中データセンターの研究を進める理由について「世界の人口の半数以上が沿岸から約200キロメートル以内に住んでいるためだ」と説明する。データセンターが都市から離れた地表ではなく、人口密集地に近い海中にあることでデータ伝送に伴う遅延が少なくなり、インターネットの閲覧やオンラインゲームがよりスムーズに利用できるようになるという。

海中データセンターは約90日間と短期間で構築できる。地上に建設するデータセンターが意思決定から運用開始まで2年前後かかるのに比べ8分の1の期間で済む。必要に応じてデータセンターの能力を拡張しやすく、「市場の需要に迅速に対応できる」(フォワーズ氏)のも大きな特長だ。

ただ、いったん海に沈めたデータセンターの中でサーバー類に故障が発生しても引き上げることは難しい。マイクロソフトでは耐用年数を1~5年と想定しており、一定期間ごとにタンクを引き上げて内部のサーバー類を更新する構想を示している。タンクそのものは再利用することで少なくとも20年間は使い続ける方針だ。

実用化の時期について、マイクロソフトは「判断するには時期尚早」とするものの、将来は自社のクラウドサービスのインフラに活用する可能性も示している。現在、マイクロソフトは世界のクラウド市場で米アマゾン・ドット・コムに次ぐ2番手だが、海中データセンターというどのライバルも試していない奥の手は、競争軸を一変させる可能性を秘めている。

■潜水艦の乗組員だった従業員が考案

IT(情報技術)大手が技術革新を競うシリコンバレーでは長期的な研究開発プロジェクトを「ムーンショット」と呼び、米グーグルの自動運転技術開発が代表例として知られる。米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が自社のムーンショットの1つと期待するのが海中データセンターだ。

研究開発に着手したのは2013年。米海軍で潜水艦の乗組員として働いていた経験のある従業員が、データセンター全体を水中に置くというアイデアを提案したのがきっかけだ。書類が研究開発部門の幹部の目にとまり、14年後半に専門のメンバーが集められてプロジェクトが正式に始動した。

マイクロソフトは人工知能(AI)を活用した製品やサービスの研究開発に特化した5000人規模の組織を立ち上げるなど、次世代技術の分野でも存在感を高めつつある。海中データセンターもAIの利便性を一段と高めるためのインフラという位置づけだ。一貫した成長戦略が評価され、今年10月には時価総額でアマゾン・ドット・コムを抜き、米国企業でアップルに次ぐ2位に浮上した。

米調査会社カナリスによると、世界のクラウド市場規模は2019年まで年率4割の成長が続く見通し。大量の電力を消費するデータセンターの省エネルギー化が大きな課題となっており、冷却に必要な電力コストを抑えられる海中データセンタが実現すれば環境負荷の軽減にも貢献する可能性がある。

(シリコンバレー=白石武志)

[日経産業新聞11月14日付]

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