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3D映像装置、肉眼でOK ホログラム使い立体に

千葉大学(Next Tech2030)

千葉大学は光の干渉を利用して立体像を記録する「ホログラフィー」を使った3次元(3D)映像装置を開発している。専用の眼鏡をかけずに、どの角度からでも肉眼で立体的に映る。眼鏡を使うタイプに比べて目への負担が少ない。ただ精細な画面を動かすには高い計算能力が必要。千葉大はプログラミング技術に加え専用の計算機を独自で開発してコストを抑え、10年後の実用化を目指す。

千葉大の伊藤智義教授の研究室。画面の周辺に緑色の人工衛星が浮かぶ。ホログラムの原理を使った3D映像だ。肉眼でどの方向からのぞいても立体的にみえた。

3D像を平面に記録して再生するホログラフィーは光の干渉を利用する。同一の光源から物体とガラス板などの記録材料の両方に光を当て、ガラス板に物体の像を焼き付ける。その上から「参照光」を当てると、物体の立体像が再現できる。

ホログラム自体は1947年に発明された。ガラス板には、参照光と物体の「干渉じま」というしま模様として記録されている。光がどれだけ強いか(振幅)と、どの方向からきたか(位相)という情報が記録される。

千葉大の研究チームが取り組むのは、デジタルで動く3D画像だ。まず、CG(コンピューターグラフィックス)をもとにしま模様を作る。しま模様を高精細ディスプレーに写し、光を当てると立体像が浮かび上がる。動画にするにはCG1枚ごとにしま模様を計算する。人工衛星の場合、1000万点で作った3DのCGを、しま模様として1億画素に記録した。

CGデータをしま模様に変換するには膨大な計算量が必要だ。1メートル四方の高精細な3D映像装置を作ろうとすると、「1秒にゼタ(ゼタは10の21乗)スケールの計算ができるパソコンが必要になる」(伊藤教授)。コンピューターの能力がゼタスケールになるのは10~20年後の見込みだが、3D映像装置だけに応用すればコストが大きくなる。

ホログラフィーの原理を応用した3D映像装置は様々なアプローチで研究が進む。デジタルでしま模様を表現する手法を開発するチームや、3D映像を写すディスプレーを開発するチームもある。千葉大は、自らソフトとハードの両方を作るところに強みがある。

研究チームは3D映像装置向け高速計算機「ホルン8」を開発した。同研究チームによる従来機と比べて計算速度は5倍に向上。人工衛星では1枚につき125秒でしま模様を計算できる。

ホルン8は、製造後に回路の書き換え可能な「FPGA」という集積回路(チップ)を利用した。一般的なチップと比べて低消費電力で動くのが特徴だ。今回、1枚のボードに8個のチップを載せた。1ボードあたり250メガ(メガは100万)ヘルツで動く。このボードを8枚並列に並べ、計算速度の向上を確認した。

CGからしま模様を計算する手法は2通りあるが、実用化する際は計算は複雑だが画質がきれいな「位相型」という手法が使われる見通しだ。

3D映像装置の実現には今よりも小さい1マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルほどの画素も必要になる。現在の最先端の画素は約3.5マイクロメートルだが、技術的には達成可能という。

1マイクロメートルの画素を縦横に1万個並べれば1億画素、大きさ1センチメートル四方の画面になる。1センチメートルの画面の裏にチップを貼れば3D映像装置が実現できるとみる。5~10年後に、ホルン8で開発したボードを1個のチップにして装置の実用化を目指す。

 眼鏡付きは普及せず
 立体的な映像を見るには眼鏡を付ける手法と、肉眼でみる手法がある。眼鏡タイプは「アナグリフ」という左右で赤と青のフィルターがついたものや、3D映画などで用いられる「偏向めがね」などがある。2010年前後に眼鏡をかけると3Dにみえるテレビの実用化が相次いだが普及はせず、市場から姿を消した。
 3Dテレビは奥行きの情報を正しく再現できず、酔うことがある。長時間の使用や子どもの利用が難しかった。一方、ホログラフィーによるタイプは体への負担が少ないとされる。実現すれば映画や遊園地などエンターテインメント目的のほか、広告手段としても利用が広がる可能性がある。
 国内では情報通信研究機構や日本大学、関西大学などもホログラフィーの3D映像装置に関する研究を行っている。情通機構は16年に専用のスクリーンやプロジェクターで3D映像を表示する技術を開発した。
 ホログラフィーは3D計測技術としても有用という。製品検査の自動化やジェット気流など空気の流れの測定に使えそうだ。計算の高速化と、センサーなど記録素子の高精細化が実現のカギとなりそうだ。
(藤井寛子)

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