2019年9月23日(月)

貿易戦争で試練の米農業(The Economist)

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2018/11/14 2:00
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The Economist

米国の農業地帯は、例年11月には静寂が訪れる。コンバインは大方の刈り入れを終え、収穫物は倉庫に集められ、農場主はようやくくつろげる。少なくとも一つの基準に基づけば、今年は満足度が高いはずだ。米イリノイ州西部で養豚と穀物を栽培するランディー・シムズ氏は、1エーカー当たり75ブッシェルの大豆を収穫した。これは従来の3割増だ。米全体でも、今年の大豆生産量は過去最高の46億9000万ブッシェルに達する見込みだ。問題は、これを誰が買うのか、だ。

米国の大豆(写真)の生産は今年、過去最高を記録する見込みだが、中国などによる報復関税で輸出は大きく落ち込んでいる=ロイター

米国の大豆(写真)の生産は今年、過去最高を記録する見込みだが、中国などによる報復関税で輸出は大きく落ち込んでいる=ロイター

米農家はトランプ大統領が始めた貿易戦争の渦中にある。輸出する農産物の2割以上が新たな関税に直面しており、今年1~9月にメキシコと中国に輸出した豚肉はそれぞれ31%と36%減少した。米最大の輸出農産物である大豆の対中輸出は年初来98%減った。米ミシガン州で3800エーカーの農地を経営するデビッド・ウィリアムズ氏にとり、これは「大きな懸念」だ。同氏は11月初め、貿易摩擦の早期解決を期待して、中国の輸入業者との取引を維持しようと他の大豆生産者らと上海での会合に参加した。その一方で、米農務省は農家の所得は今年13%減ると見込んでおり、農家の資産負債比率は09年以来最も高い水準に達すると予想されている。

■農家にとってタイミングが悪い貿易戦争

この状況は、米国がソ連への穀物輸出を一時凍結した1980年代を思い出させる。当時、金利の上昇も相まって農家の所得は急減し、多くが農場経営を断念した。現在、債務は増えているが、まだ管理可能な水準だ。ただ、先行きは報復関税がどれほど長期化するかに大きくかかっており、貿易戦争が収束しても取り返しのつかないダメージが残る恐れもある。

米農家は、今や国際通商の中核的存在だ。2000~17年に米国の農産物輸出額は3倍に拡大し、農業生産量の2割以上が輸出に向けられた。輸出量でみた最大の品目は穀物だが、世界的に肉の消費量が増えるに従い、より多くの飼料を必要とする畜産農家の大豆への需要は増えている。昨年の輸出額は、2番目に輸出量の多いトウモロコシの倍以上に相当する216億ドルに達した。

これは、生産促進に向けた政府による助成の成果でもある。商品価格が下がると支払われる補助金が増える仕組みで、大規模農家が主な対象だ。米シンクタンクのヘリテージ財団によれば、16年には年間所得が16万7000ドル(約1900万円)以上の農家がその7割近くを受け取った。

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