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スポーツビジネスの制度設計は「商品設計」
FIFAコンサルタント 杉原海太

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2018/11/15 6:30
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このほか、(特に全国ネットの)テレビ放映権のリーグによる一括管理、ドラフトによる戦力均衡、球団によって年俸に差が広がりすぎないようにする制度(ぜいたく税やサラリーキャップ)など、米国のプロスポーツは米国独特のルールの下に運営されている。国単位で見れば独特ではあるが、米国の中ではどのスポーツもほぼ同じ制度設計の下にあるといえる。オーストラリアのプロスポーツも実は米国型である。

一方、欧州はサッカーに限らず、いろんな競技のリーグに昇降格制度を設けていることが多い。実力があれば最底辺のリーグから昇格を続け、頂点のリーグに参入することも可能だ。米国型が「閉じた」リーグなら、欧州の基本設計は「開放型」といえる。

日本のリーグにある種の"ねじれ"

興味深いのは日本である。プロ野球は閉鎖型の米国を、Jリーグは開放型の欧州をフォローしているが、単純にそうと割り切れないところがある。リーグの在り方と経営の仕方にある種の"ねじれ"があるのだ。

プロ野球は大リーグのようにリーグ主導で全体最適を追求するモデルにはなりきれていない=共同

プロ野球は大リーグのようにリーグ主導で全体最適を追求するモデルにはなりきれていない=共同

プロ野球の閉鎖型は米国をフォローしたものといっても、それは大会の形式上のことであり、ビジネス面を見ると、米大リーグのようにリーグ主導で全体最適を追求するモデルにはなりきれていない。日本のプロ野球は個々の球団が強く、特に巨人戦の放映権料という分け前(部分最適)に預かれるセ・リーグと、そうでないパ・リーグの格差はかつて悲惨なものだった。最近でこそ、パ・リーグを中心に全体最適を考える議論や行動が生まれているが、米大リーグと比べたら、追求の仕方は限定的なレベルにとどまっていると言わざるをえない。

競技面の全体最適も難しい。野球界の人と会って話すと、そのたびに「野球少年が減っている」という嘆きを聞かされる。それで、その原因などを詳しく調べて実態の把握に努めているのかと問うと、野球界としての全体最適な体制が整っていない中ではなかなか難しいようである。一部の特定の球団の放映権料で潤える時代ではもはやないのだから、プロもアマチュアもセ・リーグもパ・リーグも関係なく、野球界を挙げて全体の最適を追求しなければならないように"外野"からは見えるのだが……。

Jリーグはどうか。

昇降格のある全国リーグの在り方などは欧州のフォロワーといっていい。が、ビジネスの仕切りは、放映権の一括管理など全体最適を追う米国型に寄っている。

この折衷的なスタイルは、川淵三郎Jリーグ初代チェアマンたちがプロリーグを立ち上げる際にドイツ・ブンデスリーガなどの規約を参考にしつつ、ビジネスとしては米国のNFL(アメリカンフットボール)などのマーケティングに強く影響されたためとされる。チェアマンに強い権限を持たせる制度設計は、巨人の意向に大きく左右される当時のプロ野球の在り方を反面教師にした部分があると聞いている。

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