2018年12月17日(月)

エルピクセル、医療用AI実現間近で30億円調達

日経産業新聞
コラム(ビジネス)
スタートアップ
ヘルスケア
2018/11/13 6:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

医療分野の人工知能(AI)を開発するエルピクセル(東京・千代田)は、オリンパス富士フイルムなどから約30億円を調達した。磁気共鳴画像装置(MRI)や内視鏡で撮影した画像の医師による診断を支援するAIの開発を加速する。大型調達の狙いや事業計画について、島原佑基社長に聞いた。

――今回の大型調達の狙いは何ですか。

「大きく三つある。研究開発を強化すること、製品の販路を確保すること、そして米国など海外展開を進めることだ。我々は2016年にもベンチャーキャピタルなどから7億円を調達したが、今回は事業会社からの出資が過半を占める。研究開発フェーズを脱し、製品販売に移ることを見据えた調達だ」

島原佑基社長

島原佑基社長

「調達先との具体的な協業内容はこれから検討していく。共同研究や製品販売での協力などさまざまな形が考えられる。(ロボットスーツを手掛ける)サイバーダインとは業務提携契約も結んだ。センサーから集めた生体情報のデータ解析などで連携する」

――医療用AIの事業化について教えてください。

「複数の開発パイプラインがあるが、まずは脳のMRI画像を対象にしたソフトウエアの事業化を先行させる。白質病変などの検出を支援する脳計測機能について、10月に医療機器ソフトウエアの認証を取得した。クリニックなどへの導入が決まっており、19年から本格的に販売する」

「次に、診断精度や効率の向上などAIの具体的な効用をうたう診断支援ソフトウエアを事業化したい。深層学習(ディープラーニング)などを用いて脳のMRI画像から動脈瘤(りゅう)を検出するものだ。現在、医師の読影結果と比較する臨床研究を進めている。これをまもなく終え、18年内にも医療機器としての承認取得を申請したい」

――承認取得後のソフトウエアの販売方法は。

「画像診断機器や医用画像管理システム(PACS)に組み込む形も考えられるし、クラウドで提供する形もあり得る。(画像診断機器やPACSのメーカーや仕様による制約を受けない)ベンダーフリーの立場で製品を提供していく」

「米国や欧州など海外でも事業を展開したい。米国には拠点を設け、FDA(米食品医薬品局)の承認取得においても先行事例となることを目指す」

――新規株式公開(IPO)は検討していますか。

「今回得た資金を基に、IPOに向けた事業基盤を作る。医療の世界ではAIブームが確実に訪れており、医療とAIの融合をサポートしていく。少し後れるかもしれないが、製薬分野でのAI活用も本格化するだろう。創薬や開発受託への活用が見込まれ、オーダーメード型の個別化医療にもつながる。こうした展開に向けて長期的視点で事業に取り組みたい」

■ ■ ■ 記者の目 ■ ■ ■

エルピクセルは、東京大学でライフサイエンス分野の画像解析技術などを研究していた島原氏ら3人が2014年に立ち上げた。ライフサイエンスとAIなど先端技術の両方に通じた研究者集団だ。設立4年あまりで「AI×医療画像診断」の分野では最初に名前が挙がるスタートアップに育った。毎月のように社員が増えており、規模拡大を受けて18年9月に東京・大手町に新オフィスを構えた。

今回の調達は約30億円という金額の大きさに加え、オリンパスや富士フイルムなど日本を代表する医療機器メーカーからの出資という点でも注目を集めた。自前でもAI開発を進めている大手が出資を決めたことに、エルピクセルが持つAI技術の独自性が垣間見える。

米国では今春、AIによる医療画像診断ソフトウエアが初めて米食品医薬品局の承認を取得。日本の薬事承認を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)もAI活用には「前向きだ」と島原氏は話す。AIが医師の診断を支援する時代が日本でも近づく。エルピクセルはその先頭を走る考えだ。

(大下淳一)

[日経産業新聞 2018年11月13日付]

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