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NY原油、1カ月で2割安でも残る上昇リスク

原油が値下がりしている。ニューヨーク市場の原油先物は9日の時間外取引で心理的節目の1バレル60ドルを割り込み1カ月で2割下がった。8カ月ぶりの安値圏だ。米国による経済制裁で主要産油国イランの供給が急減する不安が薄れた。10月までの原油高で約4年ぶり高値だった日本の燃料価格も落ち着きそうだが、原油高のリスクが消えたわけではない。

「米国人はイランの原油輸出をゼロにすると言い立ててきた。だが我々は売り続けている」。イランのジャハンギリ第1副大統領は6日、トランプ米政権がかける「最大の圧力」を皮肉った。

米国は5日、イランへの経済制裁の第2弾を発動した。一方で、イラン産原油の禁輸について日本を含む8カ国・地域に適用除外を認めた。トランプ米大統領が制裁再開を表明した5月から、イランの供給減が相場を押し上げてきたが、懸念されたほど減らないとの安心感が広がった。

国際指標の北海ブレント原油先物は10月初めに1バレル86ドル台と2014年10月以来の高値をつけ、足元では70ドル前後。8日にはサウジアラビア政府系の有力研究所が石油輸出国機構(OPEC)を解体した場合の原油市場への影響を研究していると報じられ、ニューヨーク先物は9日連続で下落した。「弱気相場入り」との見方もある。

イラン制裁は目先の買い材料にはならなくなった。米中貿易戦争が世界景気に影を落とし、原油需要の伸びを鈍らせるとの懸念は強い。

米利上げ観測が強まり、対ドルで通貨が下落する新興国では、ドル建てで取引する原油の割高感が増す。やはり需要を冷やしかねない。原油在庫の増加も相場の重荷だ。

それでも大幅な下落は続かないとの声は根強い。一つには、供給力の「のりしろ」が縮んでいることがある。国際エネルギー機関(IEA)によると、OPEC加盟国の余剰生産能力は9月時点で日量213万バレル。半年で3分の2に減った。

イラン産の減少を見越してサウジなどが供給を増やした分、いざというときの余力が細った。世界の需要の2%にすぎず、「原油が史上最高値をつけた08年より余裕がない」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之首席エコノミスト)。

冬の需要期入りも一因だ。例年冬は暖房燃料の消費が膨らみ原油需給が引き締まりやすい。寒さが厳しくなれば逼迫感は強まる。生産余力が薄いなかで一時的であれ供給が滞ったり、需要が急伸したりすれば相場は再び上昇するかもしれない。

産油国リビアやベネズエラの生産は不安定なまま。中東の緊張の火種も多い。今冬の北海ブレントについて「25%の確率で1バレル100ドルまで上がる」と英調査会社ウッドマッケンジーのサイモン・フラワーズ氏は話す。

イランの供給が落ち込む懸念が消えてなくなったわけでもない。米国が輸入の継続・再開を一部認めるとはいえ180日間に限った措置だ。「適用除外は一時的。イランは輸出の大半は維持できない」と米ゴールドマン・サックスは7日の報告書で予測した。

180日後の19年5月が近づくにつれ、再び消費国では買い控えが広がるだろう。米中間選挙の結果を「ほぼ完全勝利だ」と強調したトランプ氏が外交で存在感を示そうと、イランへの圧力を強める可能性もある。原油の値上がりにつながる不確定要素は残っている。

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