2018年11月18日(日)

電源車も重文建物も 防災対策の不備あらわ
17年度の検査院報告

社会
2018/11/9 12:20
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会計検査院は9日、国の2017年度決算の検査報告を安倍晋三首相に提出した。検査では、移動電源車を浸水想定区域に駐車したり、重要文化財の耐震化が進んでいなかったりするなど、防災対策の不備が多数見つかった。西日本豪雨や北海道地震など大規模な自然災害が起こるリスクが高まるなか、国などに迅速な対応を求めた。

災害時に備えて導入されたNTT西日本の移動電源車=同社提供、一部画像処理しています

災害時に備えて導入されたNTT西日本の移動電源車=同社提供、一部画像処理しています

国が出資するNTT東日本、西日本、コミュニケーションズの3社が保有する移動電源車のうち計190台を抽出した検査では、計73台(取得価格計約41億4600万円)が災害時の浸水想定区域に駐車されていたことが判明。最大3メートルの浸水の恐れがある地点も含まれていた。

移動電源車は、電話・インターネット回線を中継する施設が停電した時に、施設に電力を供給する役割を担う。3社は検査後、駐車場所を浸水想定区域外に改めたり、浸水が予想される時は緊急待避場所に移したりする対応を決めた。

住民らが災害時に連絡が取り合えるように、避難所に公衆無線LANを整備する総務省の補助事業を巡っては、自治体による運用面の不備が明らかになった。

総務省の指針は、通常は不正利用を防ぐために電話番号やメールアドレスによる認証を必要とする一方、被災後は認証なしに利用できるよう求めている。しかし、全国の19区町村では認証なしとする判断基準や手順が定められておらず、別の14市町村は認証を外す作業を平日の日中しか業者に依頼できなかった。

西日本豪雨、北海道地震では土砂災害で多くの人命が奪われた。林野庁の出先機関はリスクを把握するために、山崩れなどの「危険性が高い」と判定された国有林を定期的に実態調査している。

林野庁は5年ごとの実施が原則と定める。ところが実際は、危険地区939カ所のうち129カ所が前回調査から10年以上過ぎていた。土砂流出を防ぐための治山ダムなどの工事47件(工事費計約18億7900万円)が、実態調査の結果を反映せずに行われていたことも判明した。

観光客など不特定多数の人が出入りする重要文化財の建物の耐震性についても課題が見つかった。明治期のホテルなど5棟が耐震診断で「性能不足」と判断されながら、補強工事が済んでいなかった。

簡易検査で「耐震性に疑義がある」とされた423棟のうち373棟は、本来必要な本格的な診断が見送られたままになっていた。文化庁は検査院の指摘を受け、都道府県を通じて耐震診断や補強工事の必要性を建物の所有者に改めて伝えた。

会計検査院が2017年度決算の検査報告で指摘した不適切な経理処理は計約1156億円(374件)だった。金額は過去10年間で2番目に少なく、件数は最少という。補助金の不正受給など法令違反に当たる「不当事項」は75億円(292件)に上った。

省庁・団体別で指摘件数が最も多かったのは、厚生労働省の95件。総務省(51件)、農林水産省(42件)、国土交通省、文部科学省(いずれも32件)が続いた。

指摘金額は防衛省が最多の639億円。全体の55%を占めた。うち616億円は陸上、海上自衛隊の物品管理の事務的なミスが原因だった。このほか組織的な不正融資が明るみになった商工中金(151億円)、農水省(117億円)が100億円を超えた。

また、20年東京五輪・パラリンピックに関連する国の支出については、過去5年分で8011億円に上ったと記載。政府はこのうち、大会運営などに直接関連する支出は1725億円にとどまるとする調査結果をまとめた。

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