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豊島逸夫の金のつぶやき

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市場揺さぶる「OPECなき世界」

2018/11/9 9:41
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「石油輸出国機構(OPEC)なき世界はどうなるか」とのリポートをサウジアラビア系シンクタンクがまとめた、と米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じ、市場の話題になっている。ときあたかも、原油先物価格60ドル割れが視野に入り、弱気相場入りと宣告されている。

筆者がフロアトレーダーとして働いたNYMEXにて

筆者がフロアトレーダーとして働いたNYMEXにて

サウジ、ロシア、米国の原油生産量が、それぞれ日量1100万バレル前後に達し、三つどもえで世界最大原油生産国の座を競うという市場の現状だ。特にサウジとロシアが接近してOPECを素通りする状況が「NOPEC」と揶揄(やゆ)されるほどだ。

今週末11日にも、アブダビで非OPEC産油国も加えた「OPECプラス」の会合が開催される。これは12月のOPEC全体会合に向けた根回しと位置付けられる。

OPEC内部の亀裂は拡大の一途だ。トランプ米政権によるイランへの経済制裁再開とともに、特にサウジ対イランの対立の構図が激化してきた。

トランプ米大統領は、原油高の元凶としてOPECを糾弾している。米中間選挙が終わったので、サウジ側は、米国国民生活を意識したOPECたたきも小康状態になると状況分析したいところだ。しかし、中間選挙後の記者会見におけるトランプ大統領の激しい言動を見せつけられると楽観的にはなれない。

報道によれば、くだんのリポートでは、OPEC解散で産油国が「仁義なき戦い」に突入するケースと、サウジが膨大な埋蔵量を武器に原油価格形成主導権を握るとのシナリオが吟味されている。

そもそも、サウジのムハンマド皇太子は、長期的に原油需要がピークアウトするとの読みでサウジ経済の脱原油化戦略を建ててきた。その資金源ともくろんだのはサウジの国策原油会社であるサウジアラムコの新規株式公開(IPO)だ。史上最大のIPOとされ、世界の取引所がサウジ詣でに走り、誘致合戦を繰り広げた。だが、上場のための情報開示などイスラム社会経済が受け入れられない点が顕在化して、現在は棚上げ状態となっている。そこに、降って湧いたようにサウジ記者殺害疑惑が生じた。

サウジは国際世論の激しい標的となった。そこで、サウジが原油を武器に使った1970年代のオイルショックの記憶が市場によみがえり、原油の1バレル100ドル説まで飛び出した。

しかし、新興国経済が減速するなかで、市場には原油の需要減がジワリと効き始めている。イラン経済制裁によりイラン産原油輸出の急減が見込まれるが、トランプ政権が適用除外国を設定したことで、供給急減の切迫感が後退した。そこに、米国利上げによるドル高が、原油含めコモディティー全体に下げ圧力をかけている。このような市場環境で、本リポートはサウジ側が危機管理対策に動いている証左とみえる。

1か月前には100ドル説、現在は40ドル説。価格予測は激しく振れる。需給だけでは到底、説明できない。結局、OPECの存在感が揺らぐと、投機筋が「漁夫の利」で価格形成主導権を握ることになる。市場の視点では、生産者対ヘッジファンドのせめぎあいと映る。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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