2018年11月14日(水)

ユーロ圏1.9%成長に下方修正 欧州委の19年見通し
中国減速が重荷 伊財政リスクなど不透明感強く

ヨーロッパ
2018/11/8 19:09
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【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)の欧州委員会は8日、2020年までの経済見通しを公表した。ユーロ圏の19年の実質成長率は前年比1.9%で、7月の前回見通しから0.1ポイントの下方修正となった。2%を割り込めば3年ぶり。緩やかな回復が続いたユーロ圏経済の重荷となっているのが、米英に次ぐ輸出相手の中国経済の減速だ。イタリアの財政リスクも強まり、先行きは視界不良になってきた。

「先行きは不確実性でいっぱいだ」。経済見通しの冒頭では、ユーロ圏景気の見通しをこう表現した。今回初めて示した20年の実質成長率は1.7%とさらに鈍化。消費者物価指数の上昇率は原油価格の上昇を反映し、19年を前年比1.8%と、前回見通し(1.7%)から引き上げた。

「荒波の中へ向かい始めた」(ドイツ大手経済研究所のIfo研究所)。欧州ではユーロ圏景気の先行きへの警戒が広がる。Ifo研究所が5日公表した10~12月期の景況感指数は6.6となり、7~9月期(19.6)から大きく低下。16年半ば以来の低水準に落ち込んだ。

ユーロ圏の7~9月期の実質域内総生産(GDP)の伸び率は年率換算で0.6%と、約4年ぶりに1%を割り込んだ。4~6月期(年率1.8%)から大幅鈍化した理由とされているのが、9月から欧州で導入された新たな自動車の排ガス検査だ。導入前に自動車の駆け込み需要が発生した反動で、9月の新車登録台数が前月比37%超落ち込み、GDPのかく乱要因となったもようだ。

ただ排ガス検査の影響を除いても、ユーロ圏景気は減速感を強めているとの指摘が多い。独コメルツ銀行は「中国の需要の落ち込みが欧州製造業を苦しめている」と指摘。排ガス検査の影響は10~12月期以降に消えるが、リーマン危機後で最も高い2.4%成長を記録した17年の勢いを取り戻すのは難しいとみる。

ユーロ圏の対中国輸出の伸びは大幅に鈍化。17年1~8月期は前年同期比19.2%増だったが、18年1~8月期は同3.3%増にとどまった。四半期ベースでは17年は2ケタ台の伸びを示していた対中国輸出が1~3月期以降、1~5%増に急減速している。

景気の先行指標とされるユーロ圏の製造業の購買担当者景気指数(PMI)では、10月の新規輸出受注を示す指数が13年6月以降で初めて拡大と悪化の判断の分かれ目となる50を下回った。同指数を公表する英IHSマークイットは米中など「貿易戦争のエスカレート」を理由に挙げた。

特に打撃を受けているのが中国に産業用機械などを多く輸出するドイツだ。ドイツ卸売・貿易業連合会(BGA)は10月中旬、5%成長を見込んでいた18年のドイツの輸出全体の見通しを3.5%に引き下げた。米中貿易戦争が独輸出減速に影響しているのは「間違いない」と強調。19年はさらに減速すると見込む。

ユーロ圏の先行きにはさらにイタリアの財政リスクや英国のEU離脱、米国との貿易摩擦など不透明要因が山積する。

欧州委の経済見通しは「イタリアの経済財政は岐路に立っている」と強調。19年の実質成長率見通しは1.2%で、1.5%成長を見込む伊政府との違いが改めて浮き彫りになった。

欧州委は伊政府の19年予算案が高水準の政府債務をさらに膨張させる懸念があるとして、13日までの修正を要求中。伊側は財政拡大による成長刺激で、債務残高は減ると主張するが、欧州委は20年も同国の成長率は1.3%にとどまるとみる。

ユーロ圏の成長率は、英国がEU離脱後も貿易関係などで現状を維持すると想定して算出した。ただ、英国がEUと「合意なし」で19年3月に離脱を迎えるリスクはなお消えていない。金融市場が動揺したり、企業活動が混乱したりする懸念も大きく、ユーロ圏経済の先行きに暗い影を落としている。

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