豪、太平洋諸国向けインフラ支援基金 1600億円規模
【シドニー=松本史】オーストラリアのモリソン首相は8日、太平洋諸国のインフラ支援のために20億豪ドル(約1650億円)のファンドを設立すると発表した。地域でインフラ支援を通じて影響力を強める中国に対抗する。豪州の支援はこれまで治安維持や災害復旧、医療や教育分野などが主だったが今後、需要が多いエネルギーや通信、交通、水資源など重要インフラへの支援を増やす。

モリソン氏は2030年までに太平洋諸国では毎年31億米ドル(約3500億円)のインフラ需要があると指摘。地域向けに「豪インフラ融資機関」を設立し、20億豪ドルを融資するとした。同氏は「太平洋諸国への関与を新たなレベルに引き上げる」と強調。「歴史的な経緯や地理的な近さはあるが、豪州は地域への影響力を当然のものとしてとらえられなくなった」と、相対的に豪州の存在感が低下していると述べた。
名指しこそさけたが、念頭にあるのは地域で台頭する中国への強い危機感だ。中国はパプアニューギニアに加えバヌアツ、サモアなどを中心に太平洋諸国にインフラ支援を続けている。無償支援が中心の豪州に対し、中国は有償支援も多く、トンガなどでは対中債務が膨張する。こうした小国が返済に窮し、港湾など安全保障上重要な施設の使用権を中国に譲り渡す「債務のワナ」に陥るとの懸念も出る。
豪州は需要が根強いインフラ支援を増やすことで地域への関与を深め、こうした事態を未然に防ぎたい思惑もある。
ニュージーランド(NZ)も8日、太平洋諸国向けに1千万NZドル(約7億7千万円)の基金を設立すると発表した。文化やスポーツ交流、軍事協力などにあてられる。ピーターズ副首相兼外相は声明で「今後2年間で地域に派遣する(外交官などの)職員数も増やす」とし、関与を深めていく考えを示した。