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大事なことはすべて母から教わる ピューマ家族の生活

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

この動画は、野生ネコ科動物の保護団体「パンセラ」が、米国のピューマを調査する過程で撮影したものだ。モーションセンサー付きビデオカメラとGPS搭載の首輪をピューマに装着し、ピューマの母親たちの行動を記録。分析の結果、ピューマの子がねぐらでどのように過ごしているか、また母親がどれほど熱心に子育てしているかがわかってきた。録画された内容は、ピューマの子をハンターから守る手助けになると、パンセラは期待している。

パンセラの観察では、ピューマの母親は、出産後10日ほど、ずっと子どもたちとねぐらで過ごす。子の数は最大で5匹。子は生後1週間くらいで目が開く。母親はその間、ほぼ休みなく喉を鳴らし、子どもたちとコミュニケーションをとる。

その後の1カ月から1カ月半、母親は時折狩りに出掛け、2~3日戻ってこないこともある。クマやオオカミといった捕食者から子どもたちを守るため、倒れたモミの木の周りに生えた下草の中など、安全な場所にねぐらをつくる。

ただ、母親が無事に戻ってくるとも限らない。ワイオミング州では、毎年10月1日に狩猟が解禁されているかだ。ちょうど生まれたばかりのピューマの子もいれば、母親について歩いている子もいる時期だ。

世界規模でネコ科動物の保護に取り組むパンセラのピューマプログラムディレクター、マーク・エルブロッチ氏は、出掛けた母親が戻ってこなければ、「子たちは絶望しかありません」と話す。

今回の調査で、生後6週間に達したころ、母親と子はねぐらを離れることがわかった。子どもたちの体にはシマ模様がある。歯は尖っているが、母親の狩りに同行しても、ついて行くのが精いっぱいだ。母親は獲物を捕まえると、しばしば子どもたちを近くに隠し、再び狩りに出掛ける。子どもたちが母親についていけるようになると、母子は常に行動を共にするようになる。

生物学者ミシェル・ペジオル氏によれば、ピューマと人間が接触する地域では、ピューマの死因は人間によるものだという。

パンセラによれば、ピューマの生息地はアラスカ州南部からチリの南端まで28カ国にわたる。こうした国の大部分で、ピューマは狩猟対象にすることが認められている。子育て中の雌を殺すことは禁止されているものの、見つけた雌のピューマに子がいるかハンターが判断するのは難しいと、パンセラは指摘する。ワイオミング州狩猟漁業局によれば、同州では狩りが原因で、毎年70匹以上のピューマの子が孤児になっているという。

またパンセラは、狩猟の解禁を12月1日まで遅らせる提案もしている。ハンターたちがピューマの家族を特定しやすくなり、子育て中の雌を誤って狩ってしまう事故を回避できる可能性が高くなるからだ。12月になれば雪も山に降り、子どもの足あとがはっきりとわかるようになり、判別もつきやすいからだ。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2018年9月3日付記事を再構成]

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