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住民が企画から参加 「最も温かい大会」10年目

2018/11/8 6:30
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群馬県西部の山間地に神流(かんな)という人口2千人足らずの町がある。かつて林業が盛んだった時代には地域随一の街として栄え、1万人も暮らしていたが、日本の他の山間地と同様、過疎により衰退の一途をたどっている。私が群馬県庁職員だった頃にこの地域の活性化を担当したこともある。

温泉などの観光資源もなく、活性化のための方策を考えあぐねていたところ、ある方の助言と力添えがあり、トレイルランニングの大会を実施することになった。私が関わるにあたり、それまでの公務員時代の反省から行政主体では行わず、多くの住民の方々に企画、準備段階から参加してほしいと伝えた。

町民総出でランナーに声援を送る

町民総出でランナーに声援を送る

会議には老若男女を問わず地域を代表するさまざまな人々が集まり、時には心が折れてしまいそうな否定的意見も飛び出した。それでもその厳しい意見の一つひとつは、活気を失った地域への怒りや失望感であり、地元への愛着の裏返し。何とかしなければという叫び声のように思えた。住民からは徐々に「この山道を使ったらどうだ」「こんなことなら自分たちにもできる」と自発的なアイデアが出てくるようになり、主体的に動いてくれる人も現れた。

2009年の第1回大会。うかつにも開催日が狩猟の解禁日にあたっていることに直前まで気づかなかった。県警から狩猟者が誤ってランナーを撃ってしまう恐れがあるため中止するよう連絡が入り、騒然となった。多くの町民は、ここまで準備したものが立ち消えとなりそうでやるせない気持ちだっただろう。私は、ここまで結束したのに開催できなければ、もう二度とこの町は再生することができないという危機感を抱いた。その場に居合わせてはいないが、住民は涙ながらに開催を願い、最終的には町長自ら県警本部長に直談判するに及んで、なんとか開催にこぎつけた。

大会当日はそれまでのもやもやを晴らすような快晴で、わずか300人にも満たない参加者だったけれど、都会からわざわざ足を運んでくれたランナーに住民の心は打ち震えた。「素晴らしい山だし皆が温かい」とランナーの発する一言一言に私も含めて胸がいっぱいになった。12年には過疎地域を活性化した好事例ということで総務大臣賞をいただいた。このような試みの受賞は珍しいそうだ。

今週末には10回目の記念大会を迎える。総務大臣表彰でメディアからも注目され、そして日本一温かい大会との評価が定まりつつも過疎は依然としてこの地域の大きな問題だ。一朝一夕には解決しない。それでも住民には確実に地域への誇りが芽生え、やればできるという前向きな心の火はともり続けている。大会を通して少しでも盛り上げる助けになればと切に願っている。

(プロトレイルランナー)

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