2019年5月22日(水)

消えるごみ収集管、分別適さず維持費重く 集合住宅

2018/11/6 21:59
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主に集合住宅の各階にあるダストシュートから投げ入れられたごみを輸送管を通して空気流で収集施設に運ぶ設備の廃止が相次いでいる。集積所が不要で悪臭を抑えられるとして1970年代から全国のニュータウンを中心に導入が進んだが、老朽化で維持管理費が高額に。細かな分別もできず、専門家は「時代のニーズに合わなくなった」と指摘する。(中川竹美、高橋彩)

兵庫県芦屋市は、79年に約87億円をかけて整備した集合住宅などが集まる臨海部のごみ輸送設備を2030年代をめどに廃止する方針を決めた。老朽化した輸送管の改修費などがかさみ財政を圧迫するようになったうえ、「市内で以前はなかったごみ分別が浸透し、輸送管の仕組みが適さなくなった」と市の担当者は説明する。

輸送管はごみを種類別に運べないため、現在も缶やペットボトル、古紙などの資源ごみは別途車で回収している。輸送管の利用は次第に減り、現在は1日当たりの輸送可能量(29トン)の4分の1以下という。

大阪市住之江区の「南港ポートタウン」。ごみの空気輸送設備がある「環境モデル都市」として市が77年に街開きした。ダストシュートからごみを捨て輸送管で運ぶ仕組みを約1万世帯が利用しているが、市は輸送管設備の19年3月末の廃止を決めた。

整備から40年超が経過し、管に穴が開くなどの故障が続発。維持管理費は年間約2億円と、収集車での回収の約2倍に。市は12年、「財政負担が大きい」として一連の設備の廃止方針を固めた。

しかし住民側から「維持してほしい」との強い要望が上がり、市は計画を変更。空気輸送設備は廃止するが、建物内のダストシュート自体は残すことにした。新方式は、ダストシュートから捨てたごみをためるタンクを地下に設け、定期的に専用車で吸い上げて焼却場へ運ぶ。21年にも移行する計画だ。

輸送管は鉄製が多く、放置すると腐食して地盤沈下を引き起こす恐れもある。千葉県印西市は今後、10年度に使用をやめた千葉ニュータウンの設備について、1800万円をかけて全長約1.4キロの管にモルタルを流し込み補強する方針。大阪市も南港ポートタウンを同様に処理する計画だ。

近畿大の田中晃代准教授(都市計画)は「導入当初は画期的な仕組みだったが、大量消費・大量廃棄型の社会が続くことが前提だった」と指摘。「ごみ減量とリサイクルに大きくシフトした現代にはなじまず、廃止はやむを得ない」と話している。

▼ごみの空気輸送システム 1960年代にスウェーデンで開発され、欧州各国に広がったごみ収集の仕組み。地下の輸送管を通じて中継センターや焼却場へ運ぶため、ごみ置き場や回収車が不要。住民がいつでも捨てられる▽悪臭を抑えられる▽景観を損なわない――といった利点がある。
 日本ではごみの排出量が急増した高度経済成長期に普及し、兵庫県芦屋市によると、ピーク時には住宅や商業施設など全国10カ所以上で導入。一部はモデル事業として国が補助金を支出した。

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