人間の高度な言語が生まれた理由、何が可能にしたのか
日経サイエンス

2018/11/10 6:30
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鳴き声や身ぶりでコミュニケーションする動物の例はあるが、複雑な意味を言葉で伝え合うのは人間だけだ。人間が高度な言語を持つようになったのはなぜなのか?人間には他の動物にはない特徴や遺伝子があって、それが言語を生んだのか?

複雑で高度な言語を操る動物は人間だけだが…(作画はVICTO NGAI)

複雑で高度な言語を操る動物は人間だけだが…(作画はVICTO NGAI)

近年の研究はむしろ別の可能性を示している。言語を理解するには知能が必要で、言葉を話すには声を発する身体構造が必要ではあるが、そうした能力の一部は他の動物にも見られる。例えばイルカは単語の順序を理解できるし、一部の野生のサルはあるタイプの鳴き声を別の声の修飾に使っている。興味深いことに、人間の言語の複雑さは文化から生まれるらしい。話し言葉が多くの世代にわたって繰り返し伝えられることで、複雑になっていく。

■伝言ゲームで言語構造が自然発生

人は他者から言語を学ぶだけでなく、次の世代に言語を伝えていく。こうした学習の繰り返しが言語にどんな影響を及ぼすか、英エディンバラ大学の認知科学者サイモン・カービー氏はユニークな実験で調べた。コンピューター上に話者のモデル(エージェント)を作り、それらにデタラメな言葉の連なりを与える。このエージェントは他のエージェントにそれを伝え、そのエージェントがさらに別のエージェントに言語を教えるようにしてある。言語の学習と伝授を何代も繰り返させて、言語がどう変わるかを調べた。伝言ゲームのように、ついには元のメッセージとはまるで違ったものになる。

実験の結果、エージェントが他者から受け取った入力よりも構造的なメッセージを作り出す傾向が見られた。最初の言葉の連なりはランダムだったのだが、ときには少しだけ秩序のある連なりが生じる。エージェントはこの構造に気づき、それを一般化した。構造を見いだしたエージェントは、それにさらに構造を加えたものを元のメッセージの再現として出力した。エージェントの言語は世代を重ねるにつれどんどん構造的になっただけでなく、人間の自然言語と似た構造が出現した。何度も繰り返される学習のなかから、言語そのものが作り出されるようだ。

現在カービー氏はこのデジタル実験を実際の人間や動物で再現しており、学んだことを繰り返す過程のなかで実際に言語の構造が進化することを見いだしている。言語は生物学的要因と個別の学習、個体から個体への言葉の伝達の組み合わせから生じるようだ。

(詳細は現在発売中の日経サイエンス12月号に掲載)

日経サイエンス2018年12月号

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,439円 (税込み)

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