「SOGIハラ」に注意 LGBT、就活で4割体験
性的少数者(LGBT)の4割が就職活動時にハラスメントを受けている――。NPO法人「ReBit(リビット)」(東京・新宿)の調査で、企業の採用活動時にLGBTへの理解や対応が不十分な実態が明らかになった。大手を中心にLGBTの社員が働きやすい仕組みを設ける動きが広がるものの、ダイバーシティを一段と進めるには、採用時からの十分な対応が欠かせない。
「SOGI」(ソジ)は好きになる人の性別を示す性的指向(Sexual Orientation)と、自身が認識する性別を示す性自認(Gender Identity)の頭文字から取った言葉。心の性が一致しない学生に戸籍上の性の制服を強要することや、カミングアウトしたことなどを周囲に言いふらす「アウティング」などがSOGIハラにあたる。異性愛者らにとって何気ない言動も当事者らを傷つけている可能性がある。
調査は2008年から18年3月までの在学中に日本国内で新卒就活を経験して就労経験のある性的少数者を対象に、7月末から9月初旬までネットで実施。544人から回答を得た。
就活時に性的指向や性自認(SOGI、ソジ)に由来した困難やハラスメントを経験したか聞いたところ、選考時で40.6%、内定から入社までで32.7%が「経験した」と答えた。特に問題となるのが「SOGIハラ」だ。差別の意識はないものの、面接官や会社説明会の担当者らの何気ない発言が、LGBTの当事者を傷つけることがあるという。
さらに、心と体の性が異なるトランスジェンダーの人に限ると、選考時に65.8%、内定から入社までに47.2%がSOGIハラや性別違和での困難に直面したと答えた。「性自認と異なる服装や髪形、化粧をしなければならずに困った」「希望を伝えてもそれに合ったトイレや更衣室を使わせてもらえなかった」といった悩みがあった。

一方、応募した企業・組織に自らのセクシャリティーを「伝えたくない」という答えは46.2%と「伝えたい」の19.5%を上回った。伝えたくなかった理由としては「不利益を受けるかもしれない」が82.7%と圧倒的で、「採用結果へ悪い影響がある」「就職後に困る」「家族や学校など他人に広められる」などの懸念の声があがった。
LGBTへの支援活動を続けているリビットの薬師実芳代表は「SOGIによって人間性や能力が左右されるわけではない」としたうえで、「(この仕事は男性に任せるべきといった)無意識の偏見から不公正に判断されている現状がある」と強調。社内でLGBTに関する研修を増やすなど、企業全体で理解を深める必要があると指摘する。
LGBT支援に積極的な動きが広がっているものの、当事者と企業の接点が少ないとして、10月には都内でイベントを開いた。大手を中心に35社が出展し、LGBTの当事者を含めた約800人が参加した。
イベントでは社内にLGBTのコミュニティーを持つ日本マイクロソフトやアクセンチュアのほか、NTTグループや武田薬品工業などもLGBTの社員が働きやすくなる自社の取り組みなどを紹介した。
来場した高校3年の女子学生は「当事者である友人の影響もあって各社の取り組みを勉強しにきました。支援制度の存在だけでなく、実際にLGBTが働きやすい雰囲気かどうかを見ています」と話す。
LGBTへの社会の理解は徐々に進みつつあるとされる。しかし、薬師代表は「制度や対応を整えられているのはまだ業界トップの一握りの企業に限られる。制度の先にある組織内の文化浸透が次の課題になる」とみている。
(企業報道部 小柳優太)
[日経産業新聞 2018年11月5日付]

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